第26回-精神専門78ー80

Pocket

次の事例を読んで, 問題 78から問題 80までについて答えなさい。
〔事 例〕
人口5万人のR市の障害福祉課に勤務するN精神保健福祉士は, 民生委員から, Aさん(35歳, 男性)の訪問に同行してもらえないかとの依頼を受けた。理由を尋ねると近くのアパートの家主から, 「設備点検でAさんの部屋を訪ねたところ, 真っ暗な部屋にいたので心配になった」と相談された。すぐにAさんを訪問して困りごとを尋ねたが, 「眠れない」と言った後は沈黙が続いた。最後にN精神保健福祉士のことを話すと「会ってもいい」と言っていたとのことであった。
翌日, 民生委員と同行訪問したところ, Aさんは次のように話した。「家族はもういない。19歳のときに統合失調症の診断を受けて以来, 片道約2時間のY病院に通院している。障害年金と親が残した預金でやりくりしてきたが, 残額が3万円になり, 電気代の支払いも滞っている。とても不安だ。交通費がかかるので, 次の受診をどうしようか迷っている」。(問題 78)
このことがきっかけとなって, Aさんは時々, N精神保健福祉士に電話をかけてくるようになった。数か月後, Aさんから「近所が騒がしくて困る」と電話があり訪問したところ, 大変な暑さの中, 耳を覆う形のヘッドフォンを装着していた。しかし, 音楽プレーヤー等には接続しておらず, それを問うと「他の部屋がうるさいんですよ。でも言いに行くとけんかになるからね。これするとましなんです」とヘッドフォンを指した。じっくりとAさんの話を聞くと, 1週間ほど, ほとんど睡眠がとれておらず, 「前に一度入院したことがあるY病院に入院したい」と言った。そして部屋は静かであるのに, 「ほら, あれです。やかましいでしよ」と何度も言った。(問題 79)
今から受診が可能かY病院に電話をしようとN精神保健福祉士がAさんの部屋を出ると, 隣室に住んでいる女性に呼び止められてこう言われた。「そこの人, 大丈夫なんですか。いつもコードを垂らしたヘッドフォンつけて, ブツプツ言われてますよ」。N精神保健福祉士は, Aさんの病気のことやご近所に配慮を相当していることを, 女性にこの場で話をして理解を得たいと考えたが, それは思いとどまった。(問題 80)

さて, 最後の事例問題です。3問連続がんばりましょう。

問題 78 次のうち, この時点でN精神保健福祉士が同行する機関等として, 適切なものを2つ選びなさい。
1 保健所
2 精神保健福祉センター
3 福祉事務所
4 公共職業安定所(ハローワーク)
5 指定特定相談支援事業所

これは, 正直なんの問題なのかよく分からないなあ。。。事例の中で「民生委員と同行訪問」と書いてあるのに, 「同行する機関」ってのは意味が分からない。。次に同行する可能性がある機関ってことかなあ。この問題は出題者の意図が僕にはよく分からなかったので, ちゃんとした解説はできていないと思います。。また今後じっくり見直してみようと思います。

選択肢1 正答。保健所には, 精神保健福祉相談員保健師も配置されていますので, 可能性はあると思います。

選択肢2 誤り?  試験センターの発表ではこれは誤りとのことですが, 精神保健福祉センターは都道府県, 中核市に設置されています。業務の中には, 個別の訪問等も含まれている (精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談及び指導のうち複雑又は困難なものを行うこと) ので, 事例の状態によっては訪問する可能性もあると思います。

選択肢3  正答? 試験センターの発表ではこれが正答です。事例の状況を見ると, 経済的にかなり圧迫された状態であることは間違いない様子です。福祉事務所の職員が一緒に同行することはあり得るとは思いますが。。。。本人とのラポールもできていないうちにいきなりってのは実際の現場ではなかなかなさそうに思います。

選択肢4 誤り。この状況でハローワークはありえないでしょうねー。

選択肢5 誤り?  指定特定相談支援事業所は, 地域で生活する人が障害福祉サービスを利用する際に, サービス利用計画等の作成を通じて地域生活をどのように送って行くのかを相談する場所です。事例の中でAさんがサービスを利用しているかどうかはわかりませんが, 地域生活の中では身近な相談援助の場所になっているので, 可能性はあると思います。

 
問題 79 次の記述のうち, Aさんが入院することになった場合, その入院に関する説明として, 正しいものを1つ選びなさい。
1 Aさんの入院期間は, 72時間を超えない範囲に限られている。
2 Aさんが退院を申し出た場合であっても, 48時間を限度に退院させないことができる。
3 入院に当たっては, 1名の精神保健指定医が診察する必要がある。
4 退院等の請求に関することを, 書面でAさんに知らせる。
5 入院に当たっては, 2名以上の精神保健指定医が診察する必要がある。

今年度, 行動制限について出題されたのはこの1問ですね。権利擁護の専門家なのになあ。。法改正で出題しにくいのは分かりますけど。。入院形態もぜんぜん出されないし。病院で働く精神保健福祉士については必須の知識だと思うのですが。。

選択肢1 誤り。72時間を超えない入院は応急入院の説明, もしくは医療保護入院の33-2ですね。事例の中でAさんは, 自分の医師での入院を希望されているので, 特に入院について期間の定めはないと思われます。

選択肢2 誤り。任意入院者の退院制限は, 指定医の診断があれば72時間, 特定医師の診断があれば12時間まで可能です。この数字は非常によく出題されるので覚えておく必要があります。

選択肢3 誤り。任意入院はあくまで自分の意思に乗っ取った入院なので精神保健指定医の診断は必要ありません。

選択肢4 正しい。任意入院でも症状によっては, 退院の制限や行動制限が行われる可能性もあります。それらの処遇や権利についての書面告知を行う必要があります。

選択肢5 誤り。選択肢3の説明と同じです。

 
問題 80 次のうち, N精神保健福祉士が思いとどまった法的根拠として, 正しいものを1つ選びなさい。
1 地域保健法
2 地方公務員法
3 障害者基本法
4 精神保健福祉法
5 障害者総合支援法

なんじゃらほいほいという問題ですね。こんなもんどんな法律だろうと守秘義務があることを知ってればいいと思うのですが。。まあそれぞれの法律の仕組みが分かっていればなんとか解けたと思います。

選択肢1 誤り。地域保健法は, 保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定める法律です。直接N精神保健福祉士の立場には関係ないと思います。

選択肢2 正答。 N精神保健福祉士は, 市の障害福祉課に勤務しているとのことなので地方公務員法の管理下にあります。地方公務員法では, 『第三十四条 職員は, 職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も, また, 同様とする。 』と守秘義務が規定されていますのでこれが正答だと思います。

選択肢3 誤り。障害者基本法は, 障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定める法律なので, 個別のスタッフの守秘義務については触れられていません。

選択肢4 誤り。これを正答にした人も多いかもしれませんね。ただ, 精神保健福祉士の守秘義務は, 精神保健福祉法に規定されています。精神保健福祉法では, 精神保健福祉法の中で規定されている身分の (例えば, 精神保健指定医, 精神医療審査会の委員など)守秘義務が科せられています。

選択肢5 誤り。障害者総合支援法における守秘義務も選択肢4と同様です。

さーーー専門科目おーしーまーいーーーー!あとは科目総評のみですねー。なんとか一日一問達成しましたー。今日は一日過ぎてしまいましたが。。

カテゴリー: 第26回精神専門科目, 精神障害者の生活支援システム パーマリンク