第28回-精神専門52-54

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事例問題らしい事例問題ですね。3問一気にかたずけちゃいましょう!

〔事例〕
Cさん (45歳, 男性) は, 妻と2人の子ども (高校生と中学生) の4人家族で, これまで順調に働いてきた。1年前に営業部の課長となったCさんは, 責任感を持って仕事に取り組んでいたが, 部下との関係がうまくいかずに悩んでいた。その後, 次第に疲れやすくなり食欲不振と不眠がみられ, 表情は乏しく元気がなくなっていった。ある日, 仕事でのミスが続き取引先から叱責され, それを契機に朝起きられず出勤できない日が続いた。心配した上司に勧められてV精神科病院を受診したところ, うつ病と診断され, しばらく会社を休むことになった。Cさんと妻は, 今後の生活についてV精神科病院のD精神保健福祉士に「学費や住宅ローンもあるし, お父さんがずっと家にいて子どもたちにはどうでしょうか」「休みが続くと会社に戻れなくなるのではないだろうか」と不安そうに相談した。 (問題52)
1か月が経過し, 復職を焦り始めたCさんは「早く職場に戻りたい」と上司に訴え, 元の部署に復帰したが, うつ状態が悪化しては休むことが繰り返された。そのようなCさんに, 主治医はデイケアの復職支援プログラムを利用して確実な復職と再発予防に取り組む必要性を説いた。Cさんは休職の手続を取ってデイケア通所を開始し, 引き続きD精神保健福祉士が担当になった。Cさんは休まずデイケアに参加し, 真面目 にプログラムに取り組んだ。次第にに体力も回復し他のメンバーと笑顔で会話するようになったが, 自分のやり方にこだわりが強く, それを正しいと思い込んで周囲に強いる様子が目立った。D精神保健福祉士は, デイケアのカンファレンスでCさんの現状を伝え, 今後の対応を協議した。 (問題53)
デイケアを開始して5か月が経過した頃, D精神保健福祉士はCさんと面談し, 今後の意向を確認した。Cさんは「デイケアで自分の課題が見えてその対処法も学んできた。そろそろ復職に向けて具体的に進めたい」「休んでいた期間が長かったので通勤が不安だし, 前と同じように働けるのかも心配」と答えた。D精神保健福祉士はCさんの意向を踏まえて, 今後必要な働きかけを検討した。 (問題54)

問題52 次の記述のうち, この時点のD精神保健福祉士の対応として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 経済的な不安を軽減するため, 障害年金の申請手続を説明する。
2 職業の安定を図るため, 可能な仕事への転職を検討してもらう。
3 子どもの精神的負担を考え, Cさんに平日の図書館通いを勧める。
4 療養に専念するため, 会社の就業規則を確認するよう伝える。
5 復職に備えるため, 自宅では積極的に家事を行うよう促す。

選択肢1 誤り。本人に復帰の意思がある段階で障害年金の申請をすることが適切とは思えません。また, 初診日と障害認定日 (1年6ヶ月)の関係からもこの選択肢はありえませんね。

選択肢2 誤り。うーん。すぐに転職というのはあまり考えにくいですよねえ。事例を読む限りは職場のサポートも充実しているように思います。

選択肢3 誤り。イミフですね。自宅でしっかりと療養できる体制を整えたいところです。

選択肢4 正答。ここでいう就業規則は, 療養に関わる就業規則という意味かなあ??ちょっともやっとしますが, 「休みが続くと会社に戻れなくなるのではないだろうか」という不安もあると思いますので, これを明らかにする必要はありそうです。ただ, 今これが必要かなあ。。。まあ, 他が明らかに誤りなので, これしか選べない。

選択肢5 誤り。うつ病の方は責任感が強いと言われ, 療養のために休んでいる自分を責めて, 家事などをやりすぎてしまう人も多い様子です。療養に専念するのが適切だと思います。

問題53 次の記述のうち, Cさんの課題を改善するための対応として適切なものを1つ選びなさい。
1 毎日の出来事と所感を書き出して自分の思考や行動を振り返る。
2 オフィスワークプログラムで個別作業の時間を増やす。
3 自律訓練法を活用したプログラムを導入する。
4 元気回復行動プラン (WRAP) への参加を促す。
5 皆勤賞としてメンバーミーティングで表彰する。

選択肢1 正答。認知行動療法的アプローチでは, 自己の認知の傾向を毎日の振り返りという形で, 書き出すことも有効であるとされています。ただ, この治療的方法を, 精神保健福祉士として「課題を改善するための対応」と選んでしまうことには抵抗があります。精神保健福祉士は治療者ではないもんなあ。。

選択肢2 誤り。リワークプログラムにおけるオフィスワークは, 一般的に思われているオフィスワークとは異なります。実際には, 専門家の支援を受けながら, 数時間集中できる課題に取り組むことで, その疲労の程度や対処の方法なども含めて検討するものです。事例の段階では ちょっとはやいように思います。

選択肢3 誤り。自律訓練法は, ドイツのシュルツが創始した催眠療法の1つで, 心身をリラックスさせ, 自律神経の働きのバランスを回復させることを目標にしています。事例の状況には当てはまりませんね。

選択肢4 誤り。WRAP (ラップ)は困難な感情や行動を自分でチェックして元気を取り戻したり, 安定したの自分を維持したりするために自分で作る行動プランのことです。これは誤りではないと思いますが, 事例のような状況で適切かというと微妙だなあと思いますね。

選択肢5 誤り。うーん。意味分かんないですけどなんとなく誤り!!(やっつけ)

 

問題54 次の記述のうち, D精神保健福祉士の今後の働きかけとして, 適切なものを1つ選びなさい。
1 復職のタイミングはCさん自身が決めるよう伝える。
2 他の部署への配置転換を上司に依頼する。
3 次のステップとして就労移行支援事業の利用を勧める。
4 Cさんの病状を社員に周知させるよう会社に助言する。
5 職場の前まで行ってからデイケアに来ることを提案する。

選択肢1 誤り。まあ自己決定という意味ではそうですけどねえ。なんか無責任に感じちゃいますねえ。いっしょに考えていくのが正しい支援だと思います。

選択肢2 誤り。もちろん結果的に配置転換という結果はなくはないですが, 本人が不安というレベルですぐに配置転換しても解決には結びつかないと思います。

選択肢3 誤り。リワークはあくまで職場復帰を目指すもので, 障害者支援法における就労移行支援とは異なった方針で勧められています。ただ, これ必ずしも誤りとは思えません。正答である選択肢の5があまりにもひどいのでこれを選んでしまった人も多いですね。

選択肢4 誤り。本人の病状を周囲に知らせるかどうかは本人が決めることなので, 「 D精神保健福祉士の今後の働きかけ」として適切とは思えません。周知するかどうかも本人と一緒に決めていくことが大切でしょうね。

選択肢5 正答。らしいです。。これは僕は不適切な問題だと思います。例えば「リワークのための練習として, 実際, 公共交通機関などを利用して」みたいな文言があればまだ納得できますが (であったとしても間違いだと思います)。そもその事例の中では会社がどこにあるのかなどの情報もありませんし。もしかすると会社の目の前の社宅に住んでいる可能性だってありますし。。

今日はここまでー。この問題も全体的にもやっとする問題でした。

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