第25回-共通科目67

Pocket

事例を読んで, 生活保護における不服申立てに関する次の記述のうち, 制度的に正しいものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさんは現在, 福祉事務所長による保護停止の処分を受け, 生活保護を停止されている。Aさんはこの処分に納得がいっておらず, まず, 生活保護法の規定に基づいて審査請求を知事に対して行った。
1 審査請求を申し立てるとその適否について判断がなされるまで, 処分の執行は停止されるので, Aさんの生活保護は一時的に再開される。
2 知事は, 審査請求があったときは, 50日以内に裁決をしなければならず, この期間内に裁決がないときは, Aさんの主張が認容されたものとみなされる。
3 審査請求は,簡易迅速な手続きによる国民の権利利益の救済を目的としており, 申立てのための費用はAさんからは徴収されない。
4 知事の行った審査請求に対する裁決に不服があっても, Aさんは, 厚生労働大臣に対して再審査請求をすることはできない。
5 行政上の不服申立てと司法手続きは別の制度なので, Aさんは, そもそも審査請求をしなくても直接裁判を起こして処分の違法性を争うことが可能であった。

これは難しいけど良問だと思います。実際の援助場面でも必要になる可能性のある知識ですね。生活保護法における不服申し立て制度はこちらをみればほとんど書いてあります。

選択肢1 誤り。これは行政不服審査法の34条に書いてあります。基本的な事項なので覚えておきましょう。原則としては, 「審査請求は, 処分の効力, 処分の執行又は手続の続行を妨げない。」とありますので選択肢は誤りですね。一応, 「審査請求人の申立てがあつた場合において, 処分, 処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは, 審査庁は, 執行停止をしなければならない。」と例外規定があることにも注意が必要だと思います。

選択肢2 誤り。「50日」という数字を覚えていて思わずこちらを選んだ人もいるかもしれません。ただ第65条に「厚生労働大臣又は都道府県知事は, 保護の決定及び実施に関する処分についての審査請求があつたときは, 五十日以内に, 当該審査請求に対する裁決をしなければならない。
2 審査請求人は, 前項の期間内に裁決がないときは, 厚生労働大臣又は都道府県知事が審査請求を棄却したものとみなすことができる。 」とあります。選択肢では「主張が認容された」とありますので間違っていますねー。しかし, 返事がなかったらお前の主張はだめーってのはどうかなーとは思いますね。

選択肢3 正しい。生活保護に関わらず, 不服申し立ては国民の権利であるため, その費用は徴収されません。

選択肢4 誤り。第66条を見ると「市町村長がした保護の決定及び実施に関する処分又は市町村長の管理に属する行政庁が第十九条第四項の規定による委任に基づいてした処分に係る審査請求についての都道府県知事の裁決に不服がある者は, 厚生労働大臣に対して再審査請求をすることができる。」とあります。この場合には, さきほどの50日の規定が70日になることについても確認しておきましょう。

選択肢5 誤り。第69条に「この法律の規定に基づき保護の実施機関がした処分の取消しの訴えは, 当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ, 提起することができない。」とあります。このことを審査請求前置主義といい, 過去何度も出題されているので注意が必要です。

今日はここまでー。


カテゴリー: 第25回共通科目, 低所得者に対する支援と生活保護制度 パーマリンク