第28回-精神専門78-80

Pocket

次の事例を読んで, 問題78から問題80までについて答えなさい。
さて, 最期の事例問題です。がつんと3問一気に終わらせてしまいましょう。

〔事例〕
Gさん (67歳, 女性) は, 38歳のときに統合失調症を発症して以来, R市内にあるY精神科病院に入退院を繰り返した後, 地域移行・地域定着支援事業を利用して2年前からR市内の自宅に一人で暮らしている。他に身寄りはない。退院後は, Y精神科病院のH精神保健福祉士の勧めで, 若い頃に修得した華道をいかして, 障害者に対して創作的活動や生産活動の機会の提供などを行うZセンターの利用者に1週間に1回生け花を教えるなど, 充実した生活を送っている。 (問題78)
他方, Gさんは, 食事の準備や掃除, 洗濯などの家事が苦手であり, さらに加齢による身体の衰えも徐々に現れ, 要支援1の認定をR市より受けている。そのため, 退院当初より, 介護保険法のU事業所のスタッフであるJさんが作成したケアプランに基づき, ホームヘルパーのサービスを利用している。 (問題79)
最近になってGさんは, H精神保健福祉士に将来の不安を訴えるようになった。特に, Gさんが気掛かりなのは, 両親が残してくれた自分名義のアパートと預金の管理についてである。預金口座には現在, 約2千万円の残高があり, Gさんが自分で大切に管理している。生活費についても, Gさん自身の障害年金とアパート収入を活用してうまく生活している。しかし, Gさんは, 「今は自分で家計のやりくりもできてい るが, 自分ももう年だし, いつどうなるかわからない。頼れるきょうだいや親族もいない。この先, 認知症になったりしたときに, 自分に代わって財産をしっかり管理してくれる人はいないだろうか」とよく口にしている。そこで, H精神保健福祉士は, このことに対応する社会資源について紹介した。 (問題80)

問題78 次のうち, Zセンターの事業の種別として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 地域包括支援センター
2 地域生活定着支援センター
3 障害者就業・生活支援センター
4 地域活動支援センター
5 地域障害者職業センター

これはよく出題される問題ですね。

選択肢1 誤り。地域包括支援センター介護保険法で定められた, 地域住民の保健・福祉・医療の向上, 虐待防止, 介護予防マネジメントなどを総合的に行う機関です。「障害者に対して」の文面を見る限り, Zセンターではないなあ。。

選択肢2 誤り。地域生活定着支援センターは, 高齢又は障害を有するため, 福祉的な支援を必要とする矯正施設退所者について, 退所後直ちに福祉サービス等につなげるために設置されている支援機関です。これも選択肢1の解説の解説と同じく。

選択肢3 誤り。障害者就業・生活支援センターは, 障害者の職業的自立を図るために, 地域の関係機関と連携しながら, 就職に向けた準備や職場に適応・定着するための支援, 日常生活や地域生活に関する助言などを行う施設です。就労に向けての支援なので週に1回生花のプログラムはしていないでしょう。

選択肢4 正答。地域活動支援センターは, 障害者に創作的活動・生産活動の機会を提供することにより, 社会との交流を促進し, 自立した生活を支援する施設である。障害者総合支援法に基づいて市町村が行う地域生活支援事業の一つです。Zセンターの種別として適切だと思います。

選択肢5 誤り。地域障害者職業支援センターでは, 障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービス, 事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助, 地域の関係機関に対する助言・援助を実施しています。これもこの事例からは遠いですね。

 

問題79 次のうち, U事業所の業務に従事するJさんの職種として, 正しいものを1つ選びなさい。
1 介護支援専門員
2 相談支援専門員
3 精神保健福祉相談員
4 退院支援相談員
5 サービス提供責任者

U事業所は, 「介護保険法の」と書いてあるので, 明らかに正答は分かりそうですね。一応, 全部の選択肢を見ておきましょう。

選択肢1 正答。介護支援専門員は, 要介護者などからの相談に応じ, 要介護者などの心身の状況に 応じた適切な介護サービスが利用できるよう, 市町村や居宅サービス事業者, 介護保険施設などの調整を行うものです。介護保険法に規定された専門職ですね。

選択肢2 誤り。相談支援専門員は, 身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の日常生 活の自立に関する相談に応じ, 助言, 指導その他の支援を行う業務を行います。障害者総合支援法に規定された相談支援事業所に配置されている専門職です。

選択肢3 誤り。地域の精神保健活動の第一線機関である保健所や保健センターで, 精神障害者やその家族の相談に応じて, 病状の悪化を防ぐとともに, 社会復帰できるようにさまざまな援助を行なうのが精神保健福祉相談員の仕事です。これは精神保健福祉法に規定された専門職です。

選択肢4 誤り。退院支援相談員は, 診療報酬に規定された専門職で, 精神科療養病棟に入院となった患者さん1人につき退院支援相談員を1人以上配置して退院支援を行うように定められています。職種としては, 精神保健福祉士, 保健師, 看護師, 准看護師, 作業療法士又は社会福祉士として, 精神障害者に関する業務に従事した経験を3年以上有する者などを指します。これは医療機関に配置される専門職ですね。

選択肢5 誤り。サービス提供責任者は, ケアマネジャーが作成するケアプランをもとに, 具体的にどのような訪問介護サービスを行うのか計画を立てる存在です。ケアプランを作成するわけではないので誤りでね。

 

問題80 次のうち, この時点でH精神保健福祉士がGさんに紹介した社会資源として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 日常生活自立支援事業
2 生活困窮者自立支援制度
3 任意後見制度
4 地域定着支援事業
5 自発的活動支援事業

選択肢1 誤り。ほぼ毎年何回も出題される問題です。日常生活自立支援事業は, 判断能力が不十分な方(認知症高齢者, 知的障害者, 精神障害者等であって, 日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手, 理解, 判断, 意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方)を対象に利用者との契約に基づき, 福祉サービスの利用援助等を行うものです。将来的に利用する可能性はありますが, 今現在紹介される社会資源ではなさそうです。

選択肢2 誤り。生活困窮者自立支援制度は, 「現在は生活保護を受給していないが, 生活保護に至るおそれがある人で, 自立が見込まれる人」を対象に, 困りごとにかかわる相談に応じ, 安定した生活に向けて仕事や住まい, 子どもの学習などさまざまな面で支援するものです。事例とはあまり関係ありませんね。

選択肢3 正答。任意後見人制度は, 判断能力が低下した時に備えてあらかじめ後見人を決め, 公正証書に基づいて後見人契約をむすんでおく制度です。「この先, 認知症になったりしたときに, 自分に代わって財産をしっかり管理してくれる人はいないだろうか」とぴったり当てはまりますね。

選択肢4 誤り。地域定着支援は, 単身等で生活する障害のある方に対し, 常に連絡がとれる体制を確保し, 緊急に支援が必要な事態が生じた際に, 緊急訪問や相談などの必要な支援を行います。Gさんは今の所は必要あるかもしれません。

選択肢5 誤り。自発的活動支援事業とは障害者総合支援法に基づき各市町村が実施する地域生活支援事業の必須事業の一つです。障害のある方, その家族, 地域住民などが地域において自発的に行う活動(ピアサポート, 災害対策, 孤立防止活動, ボランティア活動など)を支援するものです。

ふーおわったーーー!これで精神保健福祉士専門科目の解説は終了です。4年目の解説ということでずいぶんスムーズに進むようになったけど, 結構飽きてきてしまっている自分もいます。
例年ならば「すべて科目を終えて」など言って問題の総評をするのですが, 今年からは社会福祉士の専門科目の解説にもチャレンジするのでそんな暇はなし。

ただちょっとコメントしておくと, 今年の精神専門科目は例年よりも少し簡単でした。何度も出題される問題が出ていますので, 基本的には過去問をしっかり解いておけば8割位は取れるような問題だった気がします。来年以降も共通科目が難しいぶん, 専門科目をしっかり解いていくようにがんばりましょう!

さて, 明日から社会福祉専門科目 (なんと4年分) の解説も始めます。一応下書きは半分くらい済んでいるのですが, これもかなり時間が掛かりそうです。
2月からほぼ毎日2時間くらいコツコツやっているのでなんかある意味受験生よりも勉強している感じ。でも初めてしまったから, 最期までがんばります。
ある日突然契約しているサーバーが壊れたらやめられるのになあw

最近疲れてきているので, 誤字を見つけた人はどんどん教えてくだされば嬉しいです。

 

 

カテゴリー: 第28回精神専門科目, 精神障害者の生活支援システム パーマリンク