第27回–精神専門49-51

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次の事例を読んで, 問題49から問題51までについて答えなさい。
〔事 例〕
Gさん (33歳, 女性) は, 飲酒しては当たり散らす父親と, 夫の顔色ばかり見てGさんには過干渉な母親に育てられ, 高校卒業後, 実家を離れるためあえて遠方に就職した。23歳で結婚したが, 夫の女性関係がもとで27歳で離婚した。Gさんはその憤りやむなしさから深酒するようになった。そんな時, 両親を早く亡くしたHさんから, 「子どものいる温かい家庭を作ろう」とプロポーズされ, 29歳で再婚し, 仕事を辞めた。31歳の時に長男が生まれたが, Gさんは育児に追われる中で世間から取り残されたように感じ, 寂しさから妊娠中は控えていた飲酒を再開した。次第に昼間から飲酒するようになり, 夕食の支度ができないことが多くなった。Hさんは, 「育児が大切な時に飲酒するのは母親失格」などとGさんを強く責めた。Gさんはきつく言われることが飲酒の原因と言い, Hさんのクレジットカードを使いインターネットで酒を購入して飲酒を続けた。Hさんは, 妻がやり残した長男の世話や家事を代わって行い, 何とかやりくりしてきたが, Gさんの飲酒行動に対してはどう対応すればよいか分からず, 困った末に, 市のJ精神保健福祉士に相談した。(問題49)
数日後, 長男が1歳半健診を受診しなかったことから, 保健師が家庭を訪問した。Gさんは息苦しかった実家での生活, 家事や育児の負担, 夫に言われるまま退職したことの後悔, 夫が子どものことばかり心配し自分には批判的な態度をとることへの不満, こうした状況を酒で紛らわせていることのつらさなどを語った。また, 「こんな状況では飲酒はやめたくてもやめられない」「最近は手の震えや動悸が生じるので, 夫が出勤したらすぐ飲み始める」などと話した。保健師から連絡を受けたJ精神保健福祉士は, Gさん, Hさんに会って悩みを十分に傾聴した上で, Gさんがとるべき改善策について提案した。(問題50)
GさんはJ精神保健福祉士の提案を受け入れる意向を示し, Hさんも了解した。またその際, Gさんが回復するまでの育児についてHさんが不安を訴えたため, J精神保健福祉士はその間の育児についても提案を行った。(問題51)

非常に心が重くなる事例問題ですね。事例問題なので一気にやります。

問題49 次の記述のうち, J精神保健福祉士がHさんの相談を受けて提案した内容として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 Gさん名義のクレジットカードで酒を購入できないようにしてください。
2 飲酒許容量を話し合って決め, その範囲ならGさんを責めないでください。
3 時々職場からGさんに電話して, 飲酒していないか確認してください。
4 帰宅時にGさんが飲酒していたら, 直ちに酒を取り上げてください。
5 Gさんが飲まなくて済むよう, 育児や家事をもっと手伝ってあげてください。

選択肢1 正答。あまりいいとは思えませんが, これ以外にないので僕はこれを選びます。クレジットカードをなくしてもいろいろ方法は考えると思いますが,  少なくとも現状のままではいけないというメッセージにはなると思います。

選択肢2 誤り。アルコール依存症は節酒は難しいことはかなり有名ですね。

選択肢3 誤り。「きつく言われることが飲酒の原因」という事例にもありますし, 過干渉がさらなる悪影響になる可能性もあるかと思います。

選択肢4 誤り。飲酒中ではなく, お酒が抜けている時に介入するというのが一般的ですね。

選択肢5 誤り。これはイネーブラーとして飲酒行動を助長することになります。イネーブラーとは, 何らかの依存症にある人物に対して, その依存状態を支えてしまう人のことを示します。

 

問題50 次の記述のうち, J精神保健福祉士がGさんに提案した内容として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 育児不安を解消させるために, 育児中の母親のグループに参加する。
2 夫婦が相互に理解し合うために, 夫婦カウンセリングを受ける。
3 飲酒行動をやめさせるために, 専門医療機関を受診する。
4 過去の家族関係について洞察を得るために, 精神分析療法を受ける。
5 ストレス発散のために, Hさんに協力してもらい外出する機会を増やす。

これはすべての選択肢が正答だと思いますが, 最も適切なものという点では, 選択肢3だと思います。Gさんの状況は, アルコール依存症の離脱症状もおこっていることもあり, なにわともあれ専門の医療機関の援助を受ける必要があると思います。

問題51 次の記述のうち, J精神保健福祉士がHさんに提案した内容として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 Gさんが会社を休職し, 長男の育児とGさんの世話をする。
2 Gさんが回復するまで母親に来てもらい, 長男の育児に協力してもらう。
3 Gさんが回復するまで長男を乳児院に入院させる。
4 Gさんが勤務中は, 長男を保育所に預ける。
5 Gさんが勤務中は, 母子家庭等日常生活支援事業を利用する。

うーん。この問題に正答ってあるのか。。もやっと問題ですね。

選択肢1 誤り??  まあ休職してもいいと思いますけど, ここで夫の仕事に影響を出してしまうとあとあとさらなる困難がやってくるかも。でも僕だったら休職するかもしれません。

選択肢2 誤り。事例の前半部分で母親との関係があまりよくない (AC)の話を絡めてきています。なかなか母親に頼るのは難しいかもしれません。

選択肢3 誤り。乳児院は, 乳児 (おおむね2歳未満)を入所させて, 養育する施設です。 さまざまな理由で親から離れて乳児が生活している施設であり, その子どもの生活を家庭に代わって支えます。ちょっとこの事例で「入所」という判断は行き過ぎではないでしょうか。

選択肢4 正答。保育所は, 日々保護者の委託を受けて, 乳児や幼児を保育する施設です。0歳から就学前までの子どもが通い, 保育士が親(保護者)に代わって保育を行います。両親などが働いているために日中の保育ができない場合だけでなく, 親が病気であったり出産がある場合などの利用もあります。これが一番現実的な選択肢ではないでしょうか。

選択肢5 誤り。母子家庭等日常生活支援事業は, 母子家庭, 父子家庭, 寡婦の方が, 修学等の自立に必要な理由や疾病などの理由により, 一時的に生活援助, 保育サービスが必要な場合や, 生活環境の激変により日常生活を営むのに支障が生じている場合に, 家庭生活支援員が食事や身の周りの世話などを行います。事例は1人親世帯ではないので利用できませんね。

ふう疲れたー。今日はここまでー。

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