第27回–精神専門52-54

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(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題2)
次の事例を読んで, 問題52から問題54までについて答えなさい。
〔事 例〕
Kさん (25歳, 女性) は, 高校卒業と同時に就職したが, 仕事が合わないという理由ですぐに退職した。その後, Kさんは専門学校に通い, 情報処理の資格を取得して再就職を目指した。しかし, パソコン技術の高さを買われて採用はされたものの, 要領の悪さや配慮のなさを度々指摘され, 職場の人間関係もうまくいかなくなり離職した。Kさんは次第に被害的になり, 抑うつ感と不眠に悩む日々が続いたため精神科クリニックを受診したところ, 広汎性発達障害でうつ状態と診断された。診断内容を聞いて不安になったKさんは, 「これから自分はどうしたらいいのか」「もう働けないのか」と医師に訴えたため, 近隣のV就労移行支援事業所 (以下「V事業所」という。) を紹介され, L精神保健福祉士が担当することになった。L精神保健福祉士との初回面接の際, Kさんは, 「自分は頑張って働いているのにいつも注意ばかりされる」と暗い表情で話した。(問題52)
KさんはV事業所の利用を開始し, パソコン技術をいかして印刷作業プログラムで編集を担当することになった。Kさんはパソコン操作に集中して取り組む一方, 簡単な指示を誤解し, 他の利用者がそばで重い荷物を運んでいても手伝うことはなく, 挨拶もほとんどしていなかった。L精神保健福祉士はKさんの作業場面の課題を整理し, スタッフミーティングでKさんへの支援内容を決めた。(問題53)
事業所を利用して半年が経過し, Kさんは印刷製本を営むW会社で職場実習を行うことになった。W会社の担当者, Kさん, L精神保健福祉士の三者で話し合い, まずはKさんが簡単な梱包作業から始められるようにし, 状況を見て調整を図ることにした。実習を開始して数日後, L精神保健福祉士が職場を訪問すると, Kさんは仕事の手順や指示が分からず戸惑っている様子が見受けられた。そして, その日の帰り際にKさんは, 「私にわざと難しい仕事をさせている」とL精神保健福祉士に訴えてきた。
そこで, L精神保健福祉士はW会社の担当者に対する働きかけを考えた。(問題54)

さて, 今日も事例問題なので3問一気に行きますー。

問題52 次の記述のうち, この時点でのL精神保健福祉士のKさんへの対応として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 就労に向けてKさんが利用可能な制度の概要を説明した。
2 職場で注意された内容を踏まえてKさんの問題点を確認した。
3 障害特性に留意しつつKさんの意向や考えを聞いた。
4 障害者雇用制度を活用した支援計画を立てた。
5 就労に向けて生活リズムを身につける必要性を伝えた。

これはよくある問題形式ですねー。この段階でどこまですべきかという感じでしょうか。

選択肢1 誤り。もちろん, 制度の利用説明はいずれ必要になると思いますが, 初回面接の段階ではまずは本人のニーズを把握する必要が先でしょう。

選択肢2 誤り。これは論外ですね。苦悩を表明しているクライアントに初回から問題点を指摘すると援助の契約までは至らないでしょう。

選択肢3 正答。ニーズを把握するというのがこの段階では一番大事だと思います。ただ「障害特性に留意しつつ」ってのはなんかひっかかりますねー。障害ありきで話を進めるのはあんまりなあ。。

選択肢4 誤り。初回面接でここまで急ぐ必要はなさそうです。

選択肢5 誤り。これは選択肢2の解説とほぼ同じ理解で大丈夫だと思います。

問題53 次の記述のうち, Kさんへの支援内容として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 Kさんが飽きずに作業に取り組めるように, 多様な作業メニューを用意し日替わりで提供する。
2 職場のマナーやルールを, ロールプレイで具体的に学習できる場を設定する。
3 1日の活動終了時にKさんがうまくできなかったことを振り返り, 自分で改善点を考えるように促す。
4 パソコン操作による作業時間を段階的に増やし, Kさんのパソコン技能を更に向上させる。
5 Kさんに注意する際は, 本人の気持ちを傷つけないように直接的な表現は控える。

これは発達障害の障害特性をどの程度把握した援助をするかという内容だと思います。ただ, 発達障害支援については, 彼らの差異にばかり着目した内容が多くて少し違和感があります。こういう視点は個人的にはあまり好きではありませんが, まあ僕の好き嫌いなんて関係ないので問題の解説しよっと。

選択肢1 誤り。事例を読む限りには, 仕事の内容そのものに集中できていないということはないと思います。

選択肢2 正答。これが正答に近いのではないでしょうか。こういう時にはこうしたらいいということを学習することで本人の課題をクリアしていくことができると思います。

選択肢3 誤り。これは誤りではないと思いますが, 相手への配慮等は本人が気づく事ができにくいという障害特性があると思います。

選択肢4 誤り。事例の段階ではパソコンの技能においては本人, 周囲ともに不足を感じていないと思います。ただ, この選択肢は実際にはありだと思います。できていない部分にフォーカスするよりもできていることをさらに出来る様になることで周囲の評価も変わってくる可能性もあるからです。

選択肢5 誤り。比喩的な表現や婉曲的な表現の理解が難しいのが発達障害の特徴の1つなのでhere & nowで説明をしていくことが基本だと思います。
問題54 次の記述のうち, この時点でのL精神保健福祉士のW会社の担当者に対する働きかけとして, 適切なものを2つ選びなさい。
1 なるべく多くの従業員が, 適宜Kさんに指示を与えるように助言する。
2 仕事の手順表を作成し, Kさんが見える場所に貼ってもらうように依頼する。
3 実習を一時中断し, V事業所でKさんの課題を改善後, 再開することを提案する。
4 職場の厳しさを知る良い機会なので, このまま見守ってほしいと要望する。
5 Kさんが得意なパソコンを活用した仕事が設定できないか相談する。

問題53とほぼ同じような内容の問題だと思います。これも比較的難易度は低そうですね。

選択肢1 誤り。指示は明確に一貫性を持って行うのが原則ですね。たくさんの人が指示すると混乱してしまう可能性があります。

選択肢2 正答。発達障害の障害特性として, 視覚的刺激のほうが理解しやすいという特徴があります。工程表が書いてある事で集中して作業に取り組むことができます。

選択肢3 誤り。1つ1つの課題を乗り越えることで成功体験を重ねてもらうことが職場実習の目的だと思います。

選択肢4 誤り。うーん。職場の厳しさはすでに体験しているでしょう。失敗体験を繰り返すことが本人にとっていいこととは限りませんね。

選択肢5 正答。というか最初からなんでパソコンスキルの生かせる職場にいかなかったのかは謎ですねえ。。

今日はここまでー。事例問題は気が楽ですねえ。

 

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