第27回–精神専門55-57

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(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題3)
次の事例を読んで, 問題55から問題57までについて答えなさい。
〔事 例〕
Mさん (73歳, 女性) のことでA民生委員が, 保健所に勤務しているB精神保健福祉相談員のもとに相談に訪れた。Mさんは夫と共に商店街の一角で米屋を営んでいたが, 2年前に夫を亡くし, 米屋を廃業した。その後, 一人暮らしをしていたが, 約半年前から, 物忘れがみられ始めた。連絡を受けた長女が同行し専門医を受診したところ, 軽度のアルツハイマー型認知症と診断された。長女は義父の介護があり同居できないため, Mさんは単身生活を続けていたが, 一週間前, 外出したまま家に帰れなくなり警察に保護された。長年, Mさん夫婦と一緒に商店街活動をしてきた住民たちは, とても心配しているとのことであった。さっそくB精神保健福祉相談員は自宅を訪問した。Mさんは, 「生活の中で困っていることは特にないし, まだ誰かの世話にならなくても大丈夫です」と話した。また, 「時々泥棒に入られて物が盗られるんです。でも, いつもAさんに一緒に探してもらうと見つかりますよ」とも言う。その話を聞いたB精神保健福祉相談員は, 定期的に訪問をすることとした。(問題55)
訪問終了後, A民生委員や, 同じ商店街に住むMさんを心配する住民のところへ立ち寄り, 話を聞いた。(問題56)
その後Mさんは, 再度, 外出したまま行方不明になった。再び警察に保護されたこともあって, Mさんは長女に伴われて保健所を訪れた。そこで, B精神保健福祉相談員は, Mさん, 長女, A民生委員, 心配している住民たちと話合いの場をもった。長女は施設入所を希望したが, Mさんは自宅での生活を続けたいと強く希望した。住民らは, 火の不始末による火災が心配だと言った。B精神保健福祉相談員はMさんへの個別的な支援を展開することと併せて, A民生委員をはじめとする住民たちによる支えや, 不足している地域資源を新たに創り出すなど, Mさんを支える生活環境の整備も展開することを提案した。(問題57)

さて, 事例問題なので今日も連続3問!後少しで専門科目も終わりますね。

問題55 次のうち, B精神保健福祉相談員の行う定期的訪問の目的として, 最も適切なものを1つ選びなさい。
1 自立生活訓練
2 支援計画の作成
3 入院援助
4 家事援助
5 経過観察・見守り

うーん。これは選択肢5以外考えにくいですねえ。解説はいらないですよね。

問題56次のうち, この時点でのB精神保健福祉相談員の援助プロセスとして, 正しいものを1つ選びなさい。
1 アセスメント
2 プランニング
3 インターベンション
4 モニタリング
5 エバリュエーション

これはこちらの問題とほぼ同じだと思います。同じ年にほぼ同じ問題がでるのは科目ごとのバランスが悪いなあ。正答は1で間違いないと思います。

問題57 次のうち, B精神保健福祉相談員が提案した支援の方法として, 正しいものを1つ選びなさい。
1 コミュニティソーシャルワーク
2 コミュニティディベロップメント
3 コミュニティビジネス
4 コミュニテイオーガニゼーション
5 コミュニテイベースドリハビリテーション

この用語説明は難しいですね。去年のこの問題のようにひたすら用語を知っているかどうかという問題です。こんなものは学者がそれっぽく名前をづけているだけなので正直現場でなんの役に立つのかは謎です。ただ考え方は理解しておく必要があります。一応ざっと説明します。

選択肢1 正答。コミュニティソーシャルワークとは, 地域を基盤にソーシャルワークを行うことです。もちろん, 個別のクライアントへの援助を地域を基盤として行いながら, 地域への働きかけも行ないます。これが正答だと思います。

選択肢2 誤り。コミュニティ・デベロップメントとは, 地域社会の経済的・社会的・文化的状況を改善し, 国民生活のなかに統合して十分に国家の発展に貢献し得るように, 地域社会住民の努力と政府当局の努力を結合しようとする過程です。。どちらかというと発展途上の地域で行われる技法なので誤りだと思います。

選択肢3 誤り。こちらのページを参考。コミュニティビジネスは, 地域課題の解決をビジネス的手法で取り組むものであり, 地域の人材や資源を活用することにより, 地域における新たな創業や雇用の創出を生み出し, 地域コミュニティの活性化に寄与するものと期待されています。

選択肢4 誤り。コミュニティオーガニゼーションとは, 地域組織化活動とも言われます。これは, 地域社会の福祉向上のために組織的・計画的な活動を行う社会福祉実践を指します。事例はコミュニティオーガニゼーションの一形態とも言えますが, 個別の事例を通じた活動なので選択肢1のほうがより正答に近いと思います。

選択肢5 誤り。コミュニティベースドリハビリテーション (CBR) は, これまでの施設を中心としたリハビリテーションに代わる新たな方法として, リハビリテーションを地域社会中心型アプローチで行おうというものです。もちろん, 総合的な地域開発も戦略の1つですが, この事例はリハビリという感じではないですねえ。

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