第27回–精神専門58-60

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(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題4)
次の事例を読んで, 問題58から問題60までについて答えなさい。
〔事 例〕
Cさん (61歳, 男性) は, 6人きょうだいの末っ子として生まれた。小中学校時代は, 口数が少なくおとなしい性格だったが, イライラすると店で万引きをしてしまう盗癖があり, 何度か警察に補導されたこともあった。中学卒業後に就職するが, 仕事は長続きせず, 転職を繰り返していた。母親が死亡し, 父親と二人暮らしになったことから, 父親が勤務する工務店で一緒に働くようになり,何とか辞めずに勤めていた。
しかし, 幼少期からの盗癖は改善されず, 25歳の時, 執行猶予中に万引きで逮捕され, 初めて刑務所に服役する。それ以後同様の行為で4回服役している。
Cさんが57歳の時, 父親が死亡した。そのころから仕事に行かなくなり, また万引きをして逮捕され, 懲役2年の実刑で5回目の服役となった。服役中に息苦しさや手足のしびれを訴え不穏になるなどして, 刑務所の矯正医官より, 知的障害とパニック障害と診断され投薬を受けた。きょうだい全員が出所後の受け入れや今後のかかわりを拒否していることから, 刑務所のD福祉専門官が支援を開始した。(問題58)
出所が近づき, 知的障害もあることから, 地域の支援機関につなぐことにした。Cさんの出所に向けてX地域生活定着支援センターのE精神保健福祉士が支援することになった。(問題59)
精神保健福祉士の支援により, 出所と同時に生活保護を受給してアパートに住み, Y精神科病院に通院することになった。しかし, 服薬がうまくコントロールできず, パニック障害の症状が頻発し, イライラ・不穏も強まり, 通院先に任意入院することになった。入院後, 規則正しい服薬により安定した。本人が退院したいと口にするようになったので, Y精神科病院のF精神保健福祉士が退院に向けて具体的な支援を開始した。(問題60)

さて, 事例問題のラスト。今日も3問連続でやっちゃいましょう。実は, 下書きは共通科目は終わってるんですよねえ。調子が良かったら合格発表までに全部終わらせちゃおうかなあ。

問題58 次の記述のうち, この時点でのD福祉専門官の支援として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 通院処遇の申立てのため, 「医療観察法」の説明を行う。
2 出所後の生活安定のため, 指定特定相談支援事業者の説明を行う。
3 疾患の治療を優先するため, 精神科病院の説明を行う。
4 精神保健観察の開始のため, 社会復帰調整官の説明を行う。
5 犯した罪に対して反省するため, 教誨師の説明を行う。
(注)「医療観察法」とは, 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。

この問題はちょっと難しいですけど, 消去法でなんとかって感じですね。

選択肢1 誤り。医療観察法の対象行為は6罪ですね。事例は軽微な内容なので医療観察法の適用ではありません。よく出題されるのでこちらの問題も参考にしてください。

選択肢2 正答。指定特定相談支援事業所は, 地域で生活する人が障害福祉サービスを利用する際に, サービス利用計画等の作成を通じて地域生活をどのように送って行くのかを相談する場所です。これはまあ誤りではないと思います。

選択肢3 誤り。もちろん疾患の継続的治療は必要だと思いますが, 生活基盤の安定が先かなあ。。なんか「優先」って言う言葉が引っかかります。

選択肢4 誤り。精神保健観察は, 医療観察法の通所処遇で行われます。選択肢1の解説と同じで, 微罪の場合には適用ではありません。保護観察であれば可能性はあったかもしれません。

選択肢5 誤り。教誨師は, 「監獄内における受刑者の徳性涵養のため講説する者」とのことです。まあ違いますね。。

問題59 次の記述のうち, E精神保健福祉士が行う支援の手続きとして, 適切なものを1つ選びなさい。
1 裁判所の指示を受けて行う。
2 保護観察所の依頼を受けて行う。
3D福祉専門官の指導を受けて行う。
4 きょうだいの同意を得て行う。
5 警察署の許可を得て行う。

うーん。微妙な問題だなあ。。ちょっと適切な資料はありませんでした。もやっとした解説になりそうです。

ちなみに福祉専門官とは, 「障害者のさらなる地域移行を促進する上で, 特に精神障害者が地域に移行した後に必要な支援について, 実態把握, 課題整理, 支援内容の検討等を行うとともに, 精神障害が地域の中で継続的に居宅生活を継続し, 自立に向けた支援ができるよう福祉面での支援の推進を図る」役割を持ちます。

選択肢1 誤り。まあこれは違いますね。すでに刑罰の執行が終わっているわけですから, 「裁判所の指示」を受けた援助は行われません。

選択肢2 正答。これが正解だと思います。保護観察所は, 犯罪者が再び犯罪をすることを防ぐ, 非行少年の非行をなくすという役割を持ちます。指導監督補導援護という側面から出所者の援助をするという意味では保護観察所からの依頼というのが一番自然ではないでしょうか。
選択肢3 誤り。うーん悩みましたが,  民間のE精神保健福祉士とD福祉専門官との間に上下関係はないと思います。

選択肢4 誤り。きょうだいはかかわりを拒否しています。

選択肢5 誤り。これも選択肢1の説明と同じですね。刑期を満了して出所した人に対してそのような権限はありません。

問題60 次のうち, F精神保健福祉士が退院支援を行う上で, Cさんに提案した社会資源として, 最も適切なものを1つ選びなさい。
1 保護観察所
2 地域包括支援センター
3 グループホーム
4 更生保護施設
5 精神保健福祉センター

この問題はまったく自信がありません。試験センターは正答の論拠をはっきりしてもらいたいなあ。

選択肢1 誤り。保護観察所は, 退所後の生活環境調整を行いますが, 事例では一端アパートにも入居していますし, そもそも F精神保健福祉士に相談がある段階で保護観察所とは一定の関係ができているはずですね。

選択肢2 誤り。地域包括支援センターは, 高齢者の地域ケアの中核拠点として市町村が設置する機関です。年齢的にあてはまらないと思います。

選択肢3 正答??  うーん僕はこれが正答に一番近いと思います。ただ本人のニーズもよく表に出てきていないので, 選択肢5とも悩みました。この問題には自信ぜんぜんありません。

選択肢4 誤り。更生保護施設は, 「帰住先のない保護観察中の者を一定期間保護し, その円滑な社会復帰や自立更生を助け, 再犯を防止する。」という役割を持ちます。事例を読む限りは現在は保護観察中ではないと思います。

選択肢5 誤り?? 精神保健福祉センターの業務には, 「精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談及び指導のうち複雑又は困難なものを行うこと。」が含まれています。そのため退院後に利用する社会資源の1つと言えます。また, 単身で暮らしていたアパートもあるみたいだしなあ。。こちらが正解になる可能性も十分にあると思います。

かなりもやっとする問題です。試験センターさんがどういう判断をするのか楽しみにしていますー。

今回の「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」も例年と同様に比較的難易度の低い問題だったと思います。25問中20点くらいを目標にしたいところでした。よし次の科目!!

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