第28回-共通科目12

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問題12 遺伝と環境に関する学説として, 正しいものを1つ選びなさい。
1 成熟優位説では, 学習を成立させるために必要なレディネスを重視する。
2 環境優位説では, 周囲への働きかけや環境及び出生前の経験を重視する。
3 輻輳説では, 発達は遺伝的要因と環境的要因の引き算的な影響によるとした。
4 環境閾値説では, 心理的諸特性が顕在化するには固有の人格特性があるとした。
5 行動遺伝学では, 遺伝と環境の関係を地域環境の側面から統計的手法で見積もる。

遺伝と環境に関する問題も基本的な問題ですね。この問題にかぎらず今年の心理学は結構基本をなぞっている問題が多いですねえ。人間の学習や成長に対して, 遺伝と環境のどちらが影響を与えているのかというのは, 発達心理学分野では大きなテーマでした。

選択肢1 正答。成熟優位説はゲゼルが提唱した発達モデルです。彼は双生児への実験で, 後の環境や学習よりも「遺伝」つまり, 生まれながらに持っているものが重要であると考えました。ここでいうレディネスとは「準備」と捉えることができます。つまり, 遺伝が花開くまでの準備ができていないと学習は成立しないという考え方です。

選択肢2 誤り。環境優位説は, 行動主義心理学者のワトソンが提唱した発達モデルです。彼は「私に, 健康で, いい身体をした1ダースの赤ん坊と, 彼らを育てるための条件を与えてくれ。そうしたら, そのうちの1人を訓練して, 医者, 法律家, 芸術家, 大実業家, 乞食, 泥棒にきっとしてみせる」と述べて, 学習が発達に大きな影響を及ぼすと考えました。選択肢は, 「出生前の経験」という部分が誤っているのではないかと思います。

選択肢3 誤り。これは「ふくそうせつ」と読みます。輻輳説は, シュテルン, ルクセンブルガーらが唱えた説で, 人間の発達は遺伝的要因と環境的要因のの相互作用によるものであるということを提唱しました。「引き算」というところが誤りで, 正しくは「足し算」です。

選択肢4 誤り。環境閾値説は, ジェンセンが提唱した説で, 「遺伝は, 最低限の環境が整わなければ発達に影響できない。 また, どんなに環境がよくても, 発達には遺伝的素質に基づく限界がある」というものです。例えば, 言語は, 人間の中で暮らしていれば獲得できますが, 絶対音感はいくら訓練しても獲得できない人もいますよね。

選択肢5 誤り。行動遺伝学は, 遺伝学の一分野で,行動上の変異を遺伝学的に研究する学問です。「地域環境の側面」という部分が誤っているのではないかと思います。この単語はたぶんもう出題されないので忘れちゃいましょう。

さて, 今日もあと1問!

 

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