第28回-共通科目65

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問題65 生活保護法における扶養義務者に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 近年の法改正により, 保護の開始の決定をしようとするときは, 一定の扶養義務者に対する書面による通知を行う仕組みが導入された。
2 保護の実施機関は, 家庭裁判所の審判を経ずに, 直系血族及び兄弟姉妹以外の者に扶養義務を負わせることができる。
3 保護は, 要保護者, その扶養義務者又はその他の親族の申請に基づいて開始される。
4 夫婦間と子の老親に対する関係は, 生活保護法の規定に基づき, その他の範囲に比べて強い扶養義務が課せられている。
5 被保護者に対して扶養義務者が扶養の義務を履行しないとき, 国は, その費用の全部又は一部をその扶養義務者から徴収することができる。

これはかなり難しいですが, 昨今の生活保護バッシングを考えさせる良問だと思います。非常に時間かけてしっかり作った問題ですね。

選択肢1 正答。2014の改正において, 24条に「保護の実施機関は, 知れたる扶養義務者が民法の規定による扶養義務を履行していないと認められる場合において, 保護の開始の決定をしようとするときは, 厚生労働省令で定めるところにより, あらかじめ, 当該扶養義務者に対して書面をもつて厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない。」が新設されました。

選択肢2 誤り。77条では「保護者に対して民法の規定により扶養の義務を履行しなければならない者があるときは, その義務の範囲内において, 保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は, その費用の全部又は一部を, その者から徴収することができる。」とありますが, 2項において「前項の場合において, 扶養義務者の負担すべき額について, 保護の実施機関と扶養義務者の間に協議が調わないとき, 又は協議をすることができないときは, 保護の実施機関の申立により家庭裁判所が, これを定める。」とあります。ということは家庭裁判所の審判が必要ですね。

選択肢3 誤り。第7条によると, 「保護は, 要保護者, その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し, 要保護者が急迫した状況にあるときは, 保護の申請がなくても, 必要な保護を行うことができる。 」とあります。つまり, 生活保護は病気や障害等の正答な理由があれば本人以外の代理申請が可能です。選択肢は, 同居親族であるべきところが「その他の親族」となっているので誤りですね。

選択肢4 誤り。生活保護法において絶対的扶養義務 (ざっくりいうと自らの生活水準を下げてでも追わなければならない扶養義務)は, 夫婦と未成熟の子に対する親だけです。逆に民法上の扶養義務である三親等以内の親族は, 義務者がその者の社会的地位にふさわしい生活を成り立たせたうえでなお余裕があれば援助する義務というレベルの相対的扶養義務です。選択肢における年老いた両親については相対的扶養義務に当たります。ここは近年いろいろな動きがありますので, 今後どのように変わっていくかを見ていく必要がありそうです。

選択肢5 誤り。これは難しい。77条を見ると, 「被保護者に対して民法の規定により扶養の義務を履行しなければならない者があるときは, その義務の範囲内において, 保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は, その費用の全部又は一部を, その者から徴収することができる。」とあります。これは選択肢4の絶対的扶養義務の場合に起こりうるんでしょうねえ。国ではなく, 都道府県又は市町村の長なので誤りですね。

はい今日はここまでー。

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