第27回-社会専門86

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問題86 横断調査と縦断調査に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 二変数の関連について, 横断調査であれば因果関係を推論することができるが, パネル調査ではできない。
2 パネル調査における「パネルの摩耗」とは, 第2回, 第3回と回を重ねるごとに回答者数が減っていくことをいう。
3 S市の中だけで一度だけ行う市民意識調査は, 全国規模ではないので横断調査とはいえない。
4 同じ内容の世論調査を, 1月に北海道, 2月に東北地方, 3月に関東地方でと日本を縦断し最後に九州, 沖縄地方で行えば, 縦断調査といえる。
5 今年, T市で標本抽出を行って市民意識調査を行い, 来年再び同じT市で標本抽出を行って同じ内容の市民意識調査を行うならば, パネル調査といえる。

横断調査と縦断調査に関する問題ですね。非常にざっくり言うと, 横断調査は, 1回だけやる調査, 縦断調査はターゲットを絞って何回か行う調査だと思っておけば理解しやすいと思います。

選択肢1 誤り。選択肢にある「因果関係」を社交的な性格と友人の多さの関係で説明してみようと思います。多くの場合, 「社交性の高さ」と「友人が多さ」には相関があると思います。でもこれを横断調査で調べた場合には, その場だけの調査なので「社交性が高い人が友達が多い」のか「友達が多い人が社交性が高くなる」のかのどちらかはわかりません。
縦断調査であるパネル調査 (同じ調査対象に対して,ある期間をおいて同じ質問を繰返し行う) では, これがわかります。例えば, 入学時に社交性を調べて, 一年後に友人が多いかどうかを調べればいいわけです。ということで, 選択肢は誤りですね。

選択肢2 正答。パネル調査は, 継続的に行うものなので, 一度目に参加してくれた人と連絡が取れなくなったり, その人が調査への参加を取りやめたりすることもあります。このことをパネルの摩耗といいます。

選択肢3 誤り。横断調査のメリットとして, 一度のみの調査なのである程度広範囲に対象を広げやすいというものがあります。ただ, だからといって全国規模でないと横断調査と言えないわけではありませんね。

選択肢4 誤り。選択肢のように対象を変更した場合では, 想定する母集団そのものが変わってしまうので, 縦断調査とはいえないと思います。例えば, 同じ地域を対象にしたり, 毎回全国を対象に行えば縦断調査といえます。

選択肢5 誤り。選択肢は動向調査の説明です。パネル調査では, 調査対象は個人レベルで変更されません。一方, 傾向分析では,対象とする集団は同じでも, 集団内部の個体は変化します。例えば, 広島県民を対象に1000人規模の調査を繰り返した場合には, 1回目と2回目に参加するメンバーは異なりますよね?こういう場合には, 個人の変化は分析することができませんが, 広島県民集団としての変化を見ることは可能になります。

今日はここまでー。一日3問きっついなあー。

 

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