第26回-精神専門30-32

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さて, 事例問題なので一気にいきます!

次の事例を読んで, 問題 30から問題 32までについて答えなさい。
〔事 例〕
Aさん (23歳, 男性) は, 幼いころから友達ができず, 大学時代も人に合わせるのがとても苦手で, 友達との会話では何を話してよいのか, 相手が何を求めているかも分からず, 次第に話の輪に入れなくなっていった。Aさんは, 大学を卒業し広告会社に就職したが, 職場でのコミュニケーションが上手くいかず, 「自分はダメな人間だ」と自分を低く評価して, 気分が落ち込んだ状態が続くようになった。しかし, 自分ではどうすればよいのか分からず, また誰にも相談せず1人で悩んでいた。このような様子を見てAさんのことを心配したB上司は, 会社が契約しているプログラムを利用することを考えた。(問題 30)
B上司の勧めによりプログラムのカウンセリングを利用する中で, Aさんは, 自分が発達障害かもしれないと思うようになった。その後, 精神科医の診察の結果, アスペルガー症候群という診断を受け障害に関する詳しい説明を聞いて, それまで訳が分からず苦しんでいたことの原因が, 障害によるものであると分かりほっとした。そして, プログラムを提供している事業所のC精神保健福祉士に相談するうちに, 自分自身が対処する方法を身につけたいと考えるようになった。(問題 31)
相談を受けたC精神保健福祉士は, Aさんが取り組むプログラムに関する相談に乗るだけでなく, 他の専門職や機関との支援体制を作るために連携を行った。さらに, Aさんの今後を考え, 専門職がかかわるだけではなく, B上司や同僚が職場でできるサポートをAさんに提案して実施することとした。(問題 32)
その後, C精神保健福祉士の支援を受けたAさんは, 少しずつではあるが職場で同僚とも世間話ができるようになった。その結果, 仕事を辞めることなく継続して働くことができている。

問題 30 次のうち, Aさんが利用できるプログラムとして, 適切なものを1つ選びなさい。
1 複合的自殺対策プログラム
2 従業員支援プログラム(EAP)
3 リワークプログラム
4 社会生活力プログラム(SFA)
5 包括型地域生活支援プログラム(ACT)

これはサービス問題でしょうね。一応, 復習のため設問ごとに見ておきましょう。

選択肢1 誤り。複合的自殺対策プログラムは大きく分けて, 1) こころの健康づくりネットワーク, 2) 一次予防, 3) 二次予防, 4) 三次予防(ポストベンション), 5) 物質関連障害(アルコール関連障害等)及び統合失調症等の精神疾患へのアプローチ, 6) 職域へのアプローチ で構成されています。この事例では自殺をほのめかす言動もありませんし, ちょっと飛躍しすぎているような気がしますね。

選択肢2 正答。従業員支援プログラム (EAP) はアメリカで生まれた従業員を対象にしたメンタルヘルスケアです。職場への不適応のみならず, 仕事上のパフォーマンスに影響を与えうる個人の問題を支援の対象としています。事例に適した援助プログラムだと思います。

選択肢3 誤り。リワークはRe (再び)Work(働く)という意味なので明らかに誤りですね。こちらと内容が被っているのでサービス問題と言えるでしょう。

選択肢4 誤り。社会生活力プログラムは, 「社会生活力」を高めるために, 日本で開発されたプログラムです。詳しくはこちら。これらは障害のある人々に対するリハビリテーションプログラムです。以降の事例を読むとAさんに適応となる可能性はありますが, 事例の段階ではまだAさんを障害者として援助することには慎重になる必要があるでしょう。

選択肢5 誤り。ACTもよく出題されますね。Assertive Community Treatment (ACT) は, 重い精神障害を抱えた人が住む慣れた場所で安心して暮らしていけるように, 様々な職種の専門家から構成されるチームが支援を提供するプログラムです。

 

問題 31 次の記述のうち, Aさんに対するC精神保健福祉士の対応として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 コミュニケーション面の課題を指摘して, 改善を求める。
2 相手に合わせられないことが問題だと伝え, 相手に合わせるように指示する。
3 B上司の指示を守ることの重要性を伝え, その指示に従うように言う。
4 質問や確認の方法を一緒に考え, 可能な方法を探す。
5 今の会社を辞めて, 就労継続支援事業を利用するように勧める。

これもサービス問題だと思います。一応確認しておきましょう。

選択肢1 誤り。職場への適応は環境との相互作用なので, 本人の課題として改善を求めるのは精神保健福祉士の援助とは言えないでしょう。

選択肢2 誤り。選択肢1の説明と同様です。

選択肢3 誤り。選択肢1の説明と同様です。

選択肢4 正答。共動することが大事です。これが一番適切な選択肢だと思います。

選択肢5 誤り。この段階で, 福祉的就労を提案することは, 極端すぎる援助だと思います。

 

問題 32 次のうち, そのサポートとして, 適切なものを1つ選びなさい。
1 コンサルテーション
2 ピアサポート
3 ケアマネジメント
4 フォーマルケア
5 ナチュラルサポート

これもサービスの用語問題ですね。

選択肢1 誤り。コンサルテーションとは, 機関・組織・個人が 他部門 の専門家との相談・協議・指導を受けることを言います。スーパービジョンと混同されやすいですが, 異なる点としては, スーパービジョンは悩みを抱えるバイジーに対しての援助である一方, コンサルタントは, 悩みの内容そのものに対する援助・アドバイスと言うことができます。これは明らかに異なっていますね。

選択肢2 ピアサポートとは, 同じような立場の人によるサポートという意味です。Aさんの同僚は同じ職場ではありますが, Aさんと同じ悩みを抱えているわけではないので, ピアサポートは少し遠い概念だと思います。

選択肢3 誤り。ケアマネジメントは, ケアマネジメントとは「対象者の社会生活上でのニーズを充足させるため, 適切な社会資源と結びつける手続きの総体」と定義されています。

選択肢4 誤り。社会資源は, 大きく分けてフォーマルケアインフォーマルケアに分類されます。フォーマルケアは, 自治体や専門機関など, フォーマル(正式)な制度に基づき提供されるサービスで, インフォーマルケアは, 家族や友人, 地域住民, ボランティアなどによる, 制度に基づかない非公式な支援のことをいいます。

選択肢5 正答。職場における上司や同僚等からの, 障害のある従業員へのサポートは, 職業リハビリテーション分野では「ナチュラルサポート」と呼ばれています。これが正答だと思います。

事例問題とはいえ3問は結構キツいですねー。今日はここまでー。

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