第26回-精神専門33-35

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さて, もう1つ事例, これまた一気に行きましょう!

次の事例を読んで, 問題 33から問題 35までについて答えなさい。
〔事 例〕
Dさん(68歳, 男性)は, 30歳でうつ病を発病, 入院し, それまで勤めていた会社を退職せざるを得なかった。何度か再発しながらもデイケアで知り合った妻と40歳で結婚し, その翌年に妻の兄が経営するコンビニのパート従業員として働き始め, 今は病状も落ち着いている。かつて入院していたU病院に2週間に1回の通院を欠かすことなく, 毎月の元デイケア利用者の会合(以下「OB会」という。)にも顔を出して, 他のメンバーの相談に乗ることも多い。OB会では, E精神保健福祉士がDさんへの対応を主に担っている。
ある日, Dさんの妻からE精神保健福祉士に電話があり, 最近, 接客でうっかりミスが目立つようになって心配だという。詳しく話を聞くと, 半年くらい前から物忘れをするようになり, 年相応のことと考えてあまり気にしていなかったという。E精神保健福祉士は, 先月のOB会でDさんと他のメンバーとの間で「言った, 言わない」の行き違いがあった際に, Dさんと面談したところ, 本人も物忘れを気にしていたことを思い出した。主治医の診察により, Dさんは軽度認知障害の疑いがあると指摘された。それを受けて, 次の通院日にE精神保健福祉士は, Dさんと妻と今後のことについての話合いの場を持った。(問題 33)
Dさんは, 引き続きOB会に参加し, これからもパート従業員として働きたいが, そのことを周囲に理解してもらう自信はないと述べた。E精神保健福祉士は, Dさんの希望にそいながら日常生活の維持を図るために, 日頃から連携の取れている地域包括支援センターなどの関係する専門職間で情報交換を行った。(問題 34)
その結果を受けて, Dさんや他の利用者の双方が安心して過ごせるようにOB会プログラムに配慮を行うことになった。また妻の兄に提案し, コンビニにおいてDさんが仕事を継続できるように取り組んだ。(問題 35)
E精神保健福祉士の働きかけもあって, Dさんの状態も安定しているが, 継続的に家庭, OB会やコンビニでのDさんの様子を確認することになっている。

問題 33 次の記述のうち, この話合いでE精神保健福祉士が行った対応として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 Dさんに対して, 妻が心配しているほどの状態になっていることについての自覚を促して, 事態を放置していたことの反省を求める。
2 妻に対して現実をありのまま受け入れ, いずれDさんが寝たきりになる可能性も考慮し, 介護技術の習得を求める。
3 直後のOB会で, 会のメンバーにDさんには軽度認知障害の疑いがあることを伝え, 今後Dさんが参加したときのかかわり方をメンバーに助言する。
4 Dさんの外来に同行し, Dさんとともに状況をより細かく主治医に説明することを妻に勧める。
5 Dさんの自己決定が難しいと判断し, 妻と今後の支援方針を立てる。

うーむ。全体的にあまりいい選択肢はないと思うのですが, 比較的正答に近いものを選ぶ感じでしょうか。

選択肢1 誤り。Dさん本人も現在の状況については苦しんでいる状態。本人の自覚でなんとかなる問題ではないでしょうね。

選択肢2 誤り。現在の状況で, いきなり将来的な介護まで考えるのは時期尚早だと思います。これは選べないです。

選択肢3 誤り。将来的には本人と相談の上会のメンバーに対して情報を提供することはあり得ますが, 選択肢の内容では「直後の」とありますので明らかに誤りですね。

選択肢4 正答。Dさんは自分自身が困っていることは分かっていますが, どの程度の記憶障害があるのかを主治医に伝えられていない可能性があります。専門的な判断の必要はあると考えられます。この選択肢はDさんの意思について確認していないので, 他の選択肢によっては誤答にもなり得ると思います。

選択肢5 誤り。本人の自己決定の能力がないと言えないですし, その判断を精神保健福祉士が行うこともおかしいと思います。

 

問題 34  次のうち, この専門職間のネットワークをピンカスとミナハンがいう「4つのシステム」として位置づけた場合, 適切なものを1つ選びなさい。
1 アクションシステム
2 クライエントシステム
3 ターゲットシステム
4 ワーカーシステム
5 チェンジエージェントシステム

これは難しい。こちらのサイトを参考にしました。ちょっと解けた人は少ないのではないでしょうか。ピンカスとミナハンは, 社会福祉的システムの相互作用を4つのシステムモデルによって理論的に説明しようとした人です。

正答は, 選択肢5のチェンジエージェントシステムです。これは, ワーカーと所属する機関が相互作用するシステムモデルですね。事例では, 「ワーカーが他の専門職との情報交換」という段階なので, これが正答だと思います。

ついでに他のシステムについて説明しておきますが, かなり難解なので僕自身もうまく説明できそうにありません(汗)。

選択肢1のアクションシステムは, クライアントの問題解決のために実際に活動する人たちの間でリアルタイムの相互作用が起こるシステムです。専門職のみならず, クライアントの状況によって互いに有機的な動きがある状況などがこれですね。

選択肢2のクライアントのシステムは, クライアントやクライアントの家族や地域社会などの身近なコミュニティが相互作用するシステムを示します。

選択肢3のターゲットシステムは, ワーカーとクライアントの問題解決のために標的(ターゲット)となる相手・状況・社会福祉機関などが相互作用するシステム。これは例を示すのが難しい。なにか分かりやすい例がある人は教えてください。

選択肢4のワーカーシステムはチェンジエージェントシステムとほぼ同じ意味だと考えていいと思います。じゃあこの問題は4と5どっちも正解ってなりそうなものですが, ワーカーシステムの方が, クライアントとワーカーの単一関係を示すのに対して, チェンジエージェントシステムは, 機関全体を示しているのだと思います。ぜんぜん自信ないや。。

どちらにしても, 実際の現場でこのシステムを個別に利用して援助しているというわけではなくて, それぞれのシステムが重層的に機能するのが理想なのだと思います。うー難しい。間違っていたら教えてください。

 

問題 35 次のうち, E精神保健福祉士の取組として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 ユニバーサルデザイン
2 アファーマティブアクション
3 ソーシャルアクション
4 アドボカシー
5 行動変容アプローチ

これも少し悩ましい問題ですね。消去法で解答できるかどうかとう感じでしょうか。まあ用語問題のような感じなので, 一応すべて確認して起きましょう。

選択肢1 誤り。ユニバーサルデザインとは, ロナルドメイスが提唱した概念で「できるだけ多くの人が利用可能であるように製品, 建物, 空間をデザインすること」です。これは, バリアーフリーのように障害者に特別の配慮をするのではなく, 障害者, 健常者の区別なく誰にとっても使いやすい商品や空間をデザインすることを示します。この用語はよく出題されるので覚えておいたほうがよさそうです。

選択肢2 誤り。アファーマティブ・アクションとは弱者集団の不利な現状を, 歴史的経緯や社会環境を鑑みた上で是正するための改善措置のことを言います。事例とは直接関係ないのではないでしょうか。

選択肢3 誤り。ソーシャルアクションとは, 社会福祉の向上を目的に, 世論を喚起するなどして立法・行政機関に働きかけ, 政策・制度の改善をめざす組織行動のことを示します。これも事例とは直接関係ありませんね。

選択肢4 これが正答だと思います。アドボカシーは, 権利擁護と言われ, こちらで説明したような内容です。事例の内容からはちょっと少し離れて感じるかもしれませんが, 障害を持ちながらでも仕事を継続し, 本人の望む暮らしがおくれる権利という意味ではこちらが正答になると思います。

選択肢5 誤り。行動変容アプローチは, こちらの問題とほぼ同じなので省略します。事例とは大きく異なりますね。二年連続出題なので必ずチェックしておきましょう。

今日はここまでー。ふう。この事例問題はかなり難しかったような気がします。

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