第26回-精神専門49ー51

Pocket

次の事例を読んで, 問題49から問題51までについて答えなさい。
〔事 例〕
Kさん (23歳, 男性)は, この5年間, コンビニに買い物に行く程度で, 「仕事はするよ」と口にはしているが, 自室でテレビを見たりパソコンゲームをしたりする生活をしていた。ひきこもるようになったのは, 高校時代に仲の良かった友人とのトラブルがあり, それ以降登校しなくなってからである。Kさんは小学生のころ両親が離婚し, 現在は母親と3歳年上の兄との3人暮らしである。母親とは日常会話はしているが, ひきこもるようになったきっかけや将来のことなどについて話すことはなかった。
母親は何とかしなければと悩んでいたが, 県の精神保健福祉センター(以下「センター」という。)で, ひきこもっている当事者や家族への個別相談, 家族のセルフヘルプグループ, 当事者を対象としたグループワークなどの支援が実施されていることを知り, そのことをKさんに話した。Kさんがその話に少し関心を示したように思えたため, 母親はセンターに相談に行き, L精神保健福祉相談員が面接を担当した。(問題49)
その後, 母親はL精神保健福祉相談員との面接を継続し, センターで月1回開催されている「ひきこもり家族の会」というセルフヘルプグループに参加するようになった。
このグループに参加するようになってからの母親は, 表情も明るくなりKさんと今後のことについても少しではあるが, 話すことができるようになってきて, Kさんへの直接支援をしてほしいと依頼した。(問題 50)
ところが, 数日後に母親から電話があり, 「理由は分からないが, Kは私との会話も少なくなり自室にこもりがちになってしまった。センターのことを話すと, 自分で仕事を探すから放っておいてくれ, と話に乗ってこない」とのことだった。Kさんがセンターに通うようになることを期待していた母親は, 落胆して「どうしてよいか分からない」とため息をついた。そのため, 母親も参加してケア会議を開き, 状況把握と今後の支援の方針を確認した。(問題 51)

さて, 事例問題まで進んできました。3問連続か。。
問題 49 次の記述のうち, この時点でのL精神保健福祉相談員の母親への対応として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 Kさんを説得して一緒に来所するよう伝えた。
2 早期に解決できる可能性が高いと励ました。
3 精神科の治療を受けた方がよいとアドバイスした。
4 センターの支援のプログラムについて説明した。
5 障害者就業・生活支援センターに相談に行くよう勧めた。

選択肢1 誤り。せっかく興味を示した段階で, Kさんを無理に説得して来所を促すのはリスクが高いと思います。実際のケースでは, まず母親が何度か来所しながら本人の意欲が高まるタイミングを大事にすることが多いのではないでしょうか。

選択肢2 誤り。母親からのみの情報で, 安易な判断を伝えるのは厳禁ですね。

選択肢3 誤り。これも母親のみの情報で, 臨床的な介入が必要がどうかを判断することはできないと思います。

選択肢4 正しい。この時点でできることは, まず機関の機能を適切に説明することです。本人も母親も社会資源を利用するのは初めてですし, どのようなことができて, どのようなことができないのかを明らかにすることは重要なことだと思います。

選択肢5 誤り。事例の中では「仕事はするよ」という言葉もある通り, 将来的なニーズとして就労はあるとは思いますが, 事例の時点でいきなり就労系のサービスを紹介するのはちょっとはやいと思われます。

 

問題 50 次の記述のうち, 母親からの依頼に際して, L精神保健福祉相談員が行う対応として, 適切なものを2つ選びなさい。
1 Kさんと会うために家庭訪問する。
2 母親の変化を一緒に振り返る。
3 直接支援を始めるのはまだ早いことを伝える。
4 すぐに当事者を対象としたグループワークへ参加するよう勧める。
5 母親への支援から兄への支援に切り替える。

(選択肢1 指摘を受けて訂正しました。)↓

選択肢1 正答。試験センターの発表によると, これも正答であるとのことです。適切なものを1つ選べかと勘違いして誤答としていました。

ただ, 母親に対する支援は次第に軌道に乗ってきた様子ですが, いきなり家庭訪問となるとKさん自身の気持ちの準備ができていない可能性があるかと思いますので, ちょっとあやしい感じもします。

選択肢2 正答。まずは, 母親の気持ちの変化やそれに伴うKさんとの関係性について振り返り, 介入に向けての検討を行うのは正しいと思います。

選択肢3 誤り。この事例の内容だけではまだ早いかどうかはよくわかりませんが, 母親のニーズを無条件に断ることは問題だと思います。

選択肢4 誤り。将来的には, 当事者のグループに参加することは考えられますが, 「すぐに」というところが間違っていると思います。

選択肢5 誤り。ちょっと設題の意図がわかりませんが, 間違っていると思います。

 

問題 51 次の記述のうち, ケア会議で検討された支援の方針として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 センターの母親への支援を継続する。
2 Kさんへの支援は, 母親に任せる。
3 Kさんに心理療法を行う機関を紹介する。
4 Kさんにアルバイトをするよう勧める。
5 Kさんを世帯分離して, 生活保護を申請するよう提案する。

選択肢1 正答。本人が登場しなくても, 母親を支援することで間接的に本人を支援することにもつながると思われます。

選択肢2 誤り。なんのためにセンターに来ているのかわからないですね。

選択肢3 誤り。母親に対しても拒否的な状況で心理療法を積極的に受けるとは思えません。

選択肢4 誤り。母親がセンターにくる前と現状でKさんの状況が変わったわけではありません。そう簡単にアルバイトを勧める状況ではないと考えられます。

選択肢5 誤り。これも設題の意図がよくわかりませんが, 間違っていると思います。

 

この事例問題はサービス問題でしたねー。ちょっと解説しようがない感じでした。事例問題は, 結構こういうのが多いです。精神保健福祉士の援助について, ペーパーアンドペンシルで作成するのはどれだけ工夫しても限界があるでしょう。受験生としては助かるのかもしれないですが, こんな誰にでもわかってしまうような問題をたくさん解いてもなあという感じがしちゃいますね。

今日はここまでー!

カテゴリー: 第26回精神専門科目, 精神保健福祉の理論と相談援助の展開 パーマリンク