第26回-精神専門52ー54

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次の事例を読んで, 問題 52から問題 54までについて答えなさい。
〔事 例〕
Mさん (47歳, 男性) は, 統合失調症で精神科病院に約7年入院していた。Mさんの家族は76歳になる母親だけである。アパートの収入もありなんとか暮らしてきた。
Mさんは, 軽度の精神症状が残存していたものの, 5年前から任意入院となり, 社会生活技能訓練 (SST) などにも参加していた。精神科病院の精神保健福祉士がMさんの母に退院後の同居について何度か打診したが, 入院前に暴力を振るわれたことなどを理由に同意が得られずにいた。このようなとき, Mさんは精神科病院の精神保健福祉士から精神障害者の地域移行支援事業があることを聞き, 利用を希望した。そこで, V相談支援事業所からN精神保健福祉士が, 地域移行推進員として精神科病院に訪問に行くことになった。N精神保健福祉士は自己紹介と自分の役割を説明した後, Mさんの緊張をほぐすように配慮しつつ, まず必ず聞いておくべきことを中心にMさんから話を聞いた。(問題 52)
この訪問の後, N精神保健福祉士は2週間に一度Mさんを訪問することとなった。3回目の訪問の際, N精神保健福祉士はMさんから「母に会って自宅への退院を許してくれるよう頼んでほしい」と言われた。この時点でN精神保健福祉士はMさんの母親とは面識がなかった。N精神保健福祉士は, Mさんから必要と思われる情報を得た後, Mさんの依頼に対する自分の考えを述べた。(問題 53)
6回目の訪問のとき, Mさんは「退院後, 一人暮らしは不安だ。障害年金だけでは生活できそうもないし, すぐ仕事に就く自信もない」と話した。この発言を受けてN精神保健福祉士はMさんに, 退院後の生活のプランを具体的に進めるための提案をした。(問題 54)
その提案を受け入れたMさんは, その後も, N精神保健福祉士ら支援者と相談しながら, 退院後の生活上の課題や不安を一つずつ解決していき, 支援開始後, 約半年で退院した。Mさんは現在, 「母親ともいい関係に戻れた。N精神保健福祉士の支援なしに今の自分の生活は考えられない」と話している。

問題 52 次の記述のうち, この時点の面接でN精神保健福祉士が, Mさんから聞いておくべき内容として, 最も適切なものを1つ選びなさい。
1 Mさんに現在残っている幻覚や妄想の内容とその程度。
2 Mさんの生活能力あるいは生活支援の必要性。
3 Mさんの退院に対する考えと退院後希望する生活の内容。
4 Mさんの退院に向けて, 家族から受けられる支援の内容。
5 MさんがN精神保健福祉士に対して抱いた印象。

うーむ。この問題は「この時点で」とありますが, インテーク時点での精神保健福祉士の姿勢を問うている問題だと思います。選択肢はすべてどこかの援助の段階で必要となる情報だとは思うのですが, 本人主体という意味では一番最初の段階では, 選択肢3の Mさんのニーズを聞くというのが大事なのだと思います。

問題 53 次の記述のうち, N精神保健福祉士がMさんに話したこととして, 適切なものを1つ選びなさい。
1 Mさんの依頼は, 地域移行の支援者としての私の役割の範囲を超えるものであるので, もう一度病院の精神保健福祉士にお願いしてみてほしい。
2 私は, これまでのいきさつや母親の年齢から考えて, Mさんが母親と同居するのは無理であると思うので, 別の退院先を考えよう。
3 私はMさんの母親とは面識がないので, 院内の社会生活技能訓練の場を利用して, Mさんが自分の気持ちを自分で伝える力をつける方が話が早く進むと思う。
4 私が直接依頼するより, Mさんと母親が直接話し合った方がいいので, Mさん自身が母親に退院後の同居の希望を伝えやすい環境を作る支援を行いたい。
5 私は自分で判断する立場にないので, 本日Mさんが話した希望を, 所属するV相談支援事業所の上司に報告して, 次回会うときに回答する。

事例問題の中では結構悩みますし, 日本語と出題者の意図を読むための問題という感じがしますね。

選択肢1 誤り。「地域移行の支援者としての私の役割の範囲を超える」とありますが, ここで仕事の役割はあんまり関係ないような気がします。むしろ, 地域移行という意味ではキーパーソンである母親との面談は十分にあるはず。ここでは, そのタイミングや優先順位の問題で, 断る可能性はあると思いますが。

選択肢2 誤り。母親の意見を聞かない段階で, 「無理」というのは時期尚早ですね。支援の見立ては状況に応じて柔軟に変わって行くものだと思います。

選択肢3 誤り。選択肢4とこれでずいぶん悩みましたが, 「面識がない」のであれば合えばいいし, 「はやい」という文言にもなにか違和感を感じますねー。

選択肢4 正答。当人同士の関係なので, できる限り本人が母親に伝える役割を持つと思います。そのための環境支援が優先というのは正しいと思います。

選択肢5 誤り。うーむ。どこが違うのかはうまく言えませんがまあ誤りだと思います。ただ, 実際の職場ではこういう返答をしちゃう可能性もありそう。。

 

問題 54 次の記述のうち, N精神保健福祉士がMさんに提案した内容として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 公共職業安定所(ハローワーク)の障害者の受付窓口に行き, 求人状況を確認してみたらどうか。
2 一人暮らしは難しいので, グループホームを見学してみたらどうか。
3 精神障害者のピアサポーターを紹介するので, その人の話を聞いてみたらどうか。
4 障害年金を増額できないか, 社会保険労務士の事務所で相談してみたらどうか。
5 社会福祉協議会の日常生活自立支援事業の利用を考えてみたらどうか。

選択肢1 誤り。将来に向けて就労支援の情報を知る事は大事ですが, この時点では少し早いのではないでしょうか。

選択肢2 誤り。支援の方向性の中で, 入所施設に入るという可能性はありますが, 「一人暮らしは難しい」と決めてしまうのはどうかと思います。

選択肢3 正答。地域移行支援事業の強みの1つはピアサポーターの存在です。実際に障害を抱えながら地域で暮らすピアサポーターに相談することで, 地域で暮らす事が現実的な目標に変わりますし, 不安も和らげることができると思います。

選択肢4 誤り。障害年金の増額は, この状況でできるとは思えませんし, Mさんの不安は経済的なものだけではないと思われます。

選択肢5 誤り。日常生活支援事業は, 日常生活自立支援事業は, 判断能力が不十分な方(認知症高齢者, 知的障害者, 精神障害者等であって, 日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手, 理解, 判断, 意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方)を対象に利用者との契約に基づき, 福祉サービスの利用援助等を行うものです。Mさんの状況では, すぐに利用を検討するサービスではないと思います。こちらこちらもチェックしておきましょう。

うー。やはり3問連続は時間かかるなあー。

 

カテゴリー: 第26回精神専門科目, 精神保健福祉の理論と相談援助の展開 パーマリンク