第26回–共通科目32

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問題32 地域福祉にかかわる諸外国の動向や学説に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 ロスによればコミュニティ・オーガニゼーションとは, 地域社会を構成するグループ間の協力と協働の関係を調整・促進することで地域社会の問題を解決していく過程であるとされている。
2 ヨーロッパにおける若者の労働問題に端を発したノーマライゼーションの思想は, 失業や貧困を社会から排除される原因ととらえ, その解消を目指すものである。
3 イギリスのNHS及びコミュニティケア法では, 地方自治体が必要なサービスを多様な供給主体から購入して, 継ぎ目のないサービスを提供することを目標としていた。
4 地域全体の共助の仕組みやリーダーシップの醸成を促しても福祉ニーズの充足には至らないため, 地域において福祉サービスの充実を図るコミュニティ・ビルディングというアプローチが注目されている。
5 グラノヴェッターは, 人間関係のネットワークの分析を通じて, 親密さや情緒的なつながりがある「強い紐帯」の方が, 「弱い紐帯」よりもネットワーク間の橋渡しには有効であることを示した。

さて, 新しい科目なんですが, 諸事情によって, ちょっと科目の順番を変えて行きますー。社会理論と社会システムと現代社会は少し後回しにして, 地域福祉の理論と実際を先にやりますー。いよいよ一日一問がかなりキツくなってきているのですが, なんとか行ける所までがんばろう。

選択肢1 誤り。これは今まで結構うんざりするほど出てきた問題なので, なんとか解いておきたいですね。地域福祉の理論で良くでる人名と言えば, なんといってもロスニューステッターです。選択肢はニューステッターの説明だと思うので誤りですね。彼は, 地域内の各種組織・団体・機関の代表者の討議の場を設定することで, 地域社会の問題を解決しようとしました。ロスは, 組織化説で有名です。これは, 地域社会が持っている自発性に着目して, 地域の 問題解決に向けて地域住民を組織化する過程を重視するものです。両者の違いは結構分かりにくいのですが, ニューステッターは調整重視, ロスは過程重視という風に覚えておけばいいのではないでしょうか。

選択肢2 誤り。これはすぐに分かりますね。ノーマライゼーションは, 元々デンマークミケルセンによって提唱された概念です。彼は知的障害のコロニー(収容所)での劣悪な処遇を見て, 親の会とともに1959法 (世界で初めてのノーマライゼーション法) の設立に尽力しました。

選択肢3 正答。ちょっと難しいですが, 設問のとおりです。NHS法の画期的な部分は, その内部に市場メカニズムを導入したことです。元々は国の社会保障費から民間施設へ助成する政策がとられていました (これは各国でよく行われている方法ですね)。NHS法では, 自治体に,サービスの「購入側」(Purchaser)しての役割を与え, 自治体は,複数の公的セクターおよび民間セクターの中から,サービスの内容とコストを勘案してサービスを購入して, 提供するという仕組みになっています。競争原理によるサービスの質の向上とコストの軽減が行われるというメリットがあります。。

選択肢4  誤り。これはあまり知られていない言葉じゃないかなあ。。テキストにも載っていませんでした。地域福祉ってなんかそれっぽいカタカナ用語がどんどん出てきて分け分からなくなっちゃいますよねえ。ネットで調べてみたんだけどこれという定義は見つけれませんでした。日本語だとこの論文くらいかなあ。。ちょっと自信がないですが, そもそもコミュニティビルディングとは, 地域の福祉ニーズの充実のために行うものではないと思います。また日本語にしてみると「地域の構築」なので, むしろ地域全体の共助の仕組みやリーダーシップの熟成を促すことこそが大事なんじゃあないのかなあ。。自信がないのでまた見直ししてみます。

選択肢5 誤り。グラノベッターは, ネットワークの研究を行った社会学者ですね。選択肢を読むと, これを選んだ人は多そうですが, 彼は情報の伝達やイノベーションの伝播においては, 家族や親友, 同じ職場の仲間のような強いネットワーク(強い紐帯)よりも, ちょっとした知り合いや知人の知人のような弱いネットワーク(弱い紐帯)が重要であるという社会ネットワーク理論を提唱しています。ここでいう弱いネットワークとは, ちょっとした友人とか近所の人とかを示していると分かりやすいかもしれません。

これはかなり難問だったと思います。正答率知りたい。。

今日はここまで。

今日はここまで。

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