第26回–共通科目33

Pocket

問題33 地域福祉の発展過程に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 スラム地区などにおいて隣保館が普及したことが, 隣保相扶を強調する恤救規則の制定につながった。
2 近代日本の代表的な労働運動家である片山潜が, 東京の神田に開設した善隣館は, 日本における友愛訪問活動の代表的な事例の一つである。
3 慈善事業を組織化した中央慈善協会は当時の慈善救済活動の調査や団体相互の連絡などを行い, 現在の共同募金会の源流とされている。
4 岡山県知事の笠井信一が創設した済世顧問制度は, 石井十次による岡山孤児院での取組を参考にして制度化された。
5 民間の篤志家が個別的援助と社会測量を行う方面委員制度は, 小河滋次郎がドイツのエルバーフェルト制度を参考に考案した制度とされている。

むー。社会福祉の源流についての問題です。ちょっと細かい点も多いですが解けた人は多そうですね。

選択肢1 誤り。恤救規則 (1874) は日本初の公的救済制度です。対象は, 高齢, 幼少, 疾病, 障害により生産活動に従事できない極貧の者に米を給与するというものですが, 血縁的な助け合いの精神を基本とし, 身寄りがないものに対象をしぼっていました 。選択肢は, 隣保扶養としていますが, 血縁扶養のあやまりだと思います。

選択肢2 誤り。片山潜は労働者のための教育文化活動とキリスト教的社会主義の理念に立つ地域福祉事業の発展をめざす拠点としてキングスレー館 (セツルメントハウス)を設立したことで有名です。善隣館は1934年, 方面委員安藤謙治らによって金沢市内に設立されたセツルメントですね。ただの単語問題だと思います。善隣館はあまり出題されたことはないんじゃないかな。。

選択肢3 誤り。選択肢の前半部分は正しいですが, 中央慈善協会は現在の社会福祉協議会の源流です。社会福祉協議会は, 中央慈善協会全日本民生委員同盟日本社会事業協会が合体してできたものであることは知っておくべき知識なのでチェックしておきましょう。

選択肢4 誤り。岡山県の済世顧問制度 (1917)は, ドイツのエルバーフェルト制度, ライプチヒ市の救貧委員制度を参考に制度化されたものです。石井十次の岡山孤児院もよく出題されるのでこれを機会に覚えておきましょう。

選択肢5 正答。うーん。方面委員制度 (1918)は, 小河慈次郎と大阪府知事の林市蔵らの尽力によって制度化したものです。前年の済世顧問制度と同様にドイツのドイツのエルバーフェルト制度を元に考案したものです。ちろん, 同じ国内なので, 済世顧問制度の影響も色濃く受けていると考えられます。当初は民間の篤志家を中心としたものでしたが, 救護法 (1929)で市町村の補助機関として位置づけられ, 後の民生委員につながって行きます。

今日はここまでー。

カテゴリー: 第26回共通科目, 地域福祉の理論と方法 パーマリンク