第26回–共通科目60

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問題 60 事例を読んで, Aさんに対する相談支援事業所の職員の助言に関する次の記述のうち, 最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
身体障害のあるAさん(25歳, 女性)は, Bさん(27歳, 男性)と結婚し, 半年前に出産した。子どもの発達・発育は良好である。Aさんは障害程度区分4で二肢以上に麻痺があり「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のどれもが自立していない。また, 就労はしていない。これまで夫とともに子育てをしてきたが, 最近夫が入院し, 退院のめどは立っていない。貸しビル業による不動産収入があり経済的には支障はない。Aさんは自宅で子育てをすることを強く決意しており, 相談支援事業所に相談に来た。
1 重度訪問介護に含まれる育児支援の利用を助言する。
2 母子生活支援施設の利用を助言する。
3 子どもの障害児通所支援の利用を助言する。
4 母子のレクリエーションや休養のために, 母子休養ホームの利用を助言する。
5 通所による生活介護を, 子どもとともに利用するよう助言する。

この問題も事例問題ではありますが, 知識が要求される内容ですね。正答の選択肢1はかなり難しいですが, それ以外のサービスに対しての基本的な点が分かっていれば選択肢は減らせるかも。。

選択肢1 正答。これはなかなか難しい問題です。重度訪問介護は, 介護給付の中のサービスの1つで, 重度の肢体不自由 (知的と精神にも拡大予定)があり常に介護を必要とする方に対して, ホームヘルパーが自宅を訪問し, 入浴, 排せつ, 食事などの介護, 調理, 洗濯, 掃除などの家事, 生活等に関する相談や助言など, 生活全般にわたる援助や外出時における移動中の介護を総合的に行います。事例にあるように障害程度区分が区分4以上であって, 二肢以上に麻痺等があること, 障害程度区分の認定調査項目のうち「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のいずれも「できる」以外と認定されているのが利用要件です。
あまり知られていないかもしれませんが, この重度訪問介護のサービス提供に当たって, 育児をする親が十分に子どもの世話ができないような障害者である場合の「育児支援」も位置づけられています。

選択肢2 誤り。母子生活支援施設は, 児童福祉法第38条では, 「母子生活支援施設は, 配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童を入所させて, これらの者を保護するとともに, これらの者の自立の促進のためにその生活を支援し, あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。」としています。本人のニーズである「自宅で子育て」というところからも外れていますし, 「配偶者のない」にも当てはまっていませんね。

選択肢3 誤り。障害児通所施設は, 読んで字のごとく, 障害児の通所のための施設です。事例の中でAさんの子どもには障害はないと明記してあります。

選択肢4 誤り。母子休養ホームは, 母子家庭の家族が, 宿泊旅行や休養のために無料または低額の料金で利用することができる施設です。内容としてはレクリエーションのための施設ではあるので, 将来的に利用してもおかしくありませんが, 事例の今現在利用を検討する段階にはないと思います。また, 利用の要件が母子世帯であるため原則的には当てはまらないと思います。

選択肢5 誤り。生活介護は, 常時介護を必要とする障がい者の方に, 入浴や排泄, 食事等の介護や, 創作活動, 生産活動等の機会を提供します。障がい者の方が自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう, 生活能力の向上のために必要な訓練等を行うことを目的とした施設です。Aさんのニーズが自宅での生活ということを考えると日中を通所先の施設で過ごすというこのサービスはニーズを満たしていないと同時に, この通所には子どもを連れて行くという仕組みはありませんね。

この問題は難易度が高くて僕も最初間違えました。事例のように重度の障害を持ちながら子育てをするというケースを援助する事は日本ではまだまだ少ないと思いますが, こういうケースが当たり前にあって, この問題が常識問題として感じることができる社会をめざしたいものですね。今日はここまで。

カテゴリー: 第26回共通科目, 障害者に対する支援と障害者自立支援制度 パーマリンク