第27回–精神専門9

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問題9 次のうち, 「改正精神保健福祉法」において, 医療保護入院を行うために精神保健指定医1名の診察による判定とともに必要な要件として, 正しいものを1つ選びなさい。
1 患者本人の同意
2 保護者の同意
3 精神保健福祉士の判定
4 もう1名の精神保健指定医の診察による判定
5 家族等のうちいずれかの者の同意
(注)「改正精神保健福祉法」とは, 2013年 (平成25年) に改正された「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律」のことである。

保護者制度に関する改正はキャッチーな内容ですねー。というか精神疾患で出題するのかーという感じもしますけど。。ちょっと詳しめに説明します。

精神障害者の保護者制度は, 精神病者監護法 (1900) の監護義務者に始まります。この法律では, 「精神病者はその後見人, 配偶者, 四親等内の親族又は戸主において, これを監護するの義務を負う」と規定されていまいた。この頃の社会背景として, 社会防衛的な面が重視され,  家系・血筋を重視する価値観のなかで, 家族が責任を負うのが当然といった風潮から, 精神障害者の監護も家族の役割とされており, 私宅監置の責任者として監護義務者が存在したと言えます。

精神衛生法 (1950) では, 私宅監置が禁止され, 精神病院を都道府県に配置することが義務化されました。精神障害者の治療の場が病院に移ったことで, 精神障害者に必要な治療やその他の保護を図るという「保護義務者」の役割が規定されました。1993年の精神保健法改正では「保護者」と名称が変更になっています。

保護者の役割としては, 1) 自傷他害防止監督義務, 2)精神障害者に治療を受けさせる義務,  3)精神障害者の財産上の利益を保護する義務, 4)精神障害者の診断が正しく行えるよう医師に協力する義務, 5)精神障害者に医療を受けさせるに当たって医師の指示に従う義務, 6)回復した措置入院患者等の引き取り義務などが挙げられていましたが, 家族の負担という観点から, 1999年精神保健福祉法改正では 自傷他害防止監督義務が削除されています。

2013の精神保健福祉法改正では, 保護者制度が完全撤廃され,  家族は, 退院請求, 処遇改善請求などの権利は残したまま, すべての義務が完全に撤廃されました。それに伴って医療保護入院の同意要件についても変更が加わっています。

選択肢1 誤り。選択肢は任意入院の説明です。任意入院は本人の同意に基づく入院ですね。この点は改正によって大きな変更にはなっていません。

選択肢2 誤り。医療保護入院は, 改正前までは精神保健指定医の診断と保護者の同意が必要でした。前述したように, 保護者制度そのものがなくなっているので誤りですね。

選択肢3 誤り。明らかに誤りですね。精神保健福祉士は医療保護入院の判断を行う役割はありません。

選択肢4 誤り。精神保健指定医二名の診断が必要なのは, 措置入院の説明ですね。

選択肢5 正答。改正前には, 裁判所で選任された保護者が医療保護の同意を行っていました。また, 保護者選任が完了していない場合には, 4週間に限り, 33-2 という形式で, 扶養義務者が医療保護入院の同意を与えることになっていました。

「保護者」が撤廃されたことにより, 医療保護入院の同意を誰がするのかという点についても変更となっています。改正法では, 「家族等のうちいずれかの者の同意」となっており, その家族の範疇は, 「精神障害者の配偶者, 親権を行う者, 扶養義務者及び後見人又は保佐人」となります (改正前の保護者の範囲と同じ)。また, 同意する権利がない家族も改正前の保護者になることのできない条件と同じです (未成年, 成年被後見人, 本人と訴訟している人など)。

つまり, 非常にざっくりと言うと今回の改正では, 改正前の「33-2」の医療保護入院の期間の限定性 (4週間) がなくなっただけと考える事もできます。これは保護者の負担の軽減という観点では非常に大きなことですが, 本人の権利侵害という点は明らかに注意が必要ですね。医療機関に勤務する精神保健福祉士の役割はより大きくなったと考えられます。

今日はここまでー。

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