第27回–精神専門26

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問題26 Bさん (57歳, 男性) は, コミュニケーションが非常に苦手で, 人付き合いをする際にいつも困っている。軽度の知的障害が疑われるが診断は受けていない。
幼少期から家族との関係が悪く, 家での居場所もなかった。中学卒業と同時に住み込みの仕事に就き, 家族との交流も途絶えた。住み込みの仕事は長続きせず, 就職と同時に住む場所も失ってしまい, 生活困窮に陥った。窃盗をして刑務所に入り, 刑期を終えて出所するが, 身元引受人もおらず支援もなく, 窃盗を何度も繰り返し人生の大半を刑務所で過ごしてきた。
出所間近なBさんが社会で生活できるようにするために, Bさんの特性や生活の状況等を考えた上で社会の一員として支援を行う必要がある。

この事例で求められる支援の理念として, 次のうち, この事例で求められる支援を最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ソーシャルイクオリティ
2 ソーシャルロール・バロリゼーション
3 ソーシャルジャスティス
4 ソーシャルインクルージョン
5 ソーシャル・コンストラクショニズム

うーむ。事例問題ですが, 用語の意味を問う内容と思えばいいですねー。ソーシャルなんちゃらっていろいろありすぎてどんどん現場の感覚とはずれて言ってる気もしますけど, 専門職としては知っておきたい用語です。なんかの必殺技みたい。。

選択肢1 誤り。ソーシャルイクオリティとは, 社会的不平等を是正しようというアクションのことだと思います。個人が社会における社会的地位・社会階級に等しく属していないという状態をなんとかしようという活動ではないでしょうか。間違っていたらごめんなさい。これは事例とは遠いと思います。

選択肢2 誤り。ヴォルフェンスベルガーの考えたソーシャル・ロール・ヴァロリゼーションとは, 「可能な限り, 文化的に価値のある手段を用いて, 人々のために, 価値ある社会的役割を可能にすること, 確立すること, 高めること, 保持すること, そして防衛すること」であり, 彼は「彼らの社会的役割が価値あるものとなれば, 少なくとも社会の許す範囲で, 個人の望むことはほとんど自動的に与えられることになり, 社会から否定的に考えられている個人の属性は肯定的にとらえられることになるであろう」と述べました。これは事例とは少し近いです。Bさんが社会的なロールを担えれば, Bさんの問題行動も減少するかもしれません。

選択肢3 誤り。いよいよ必殺技な感じの用語ですね。ソーシャルジャスティスとは, 社会正義とか社会的公正などと邦訳されます。社会的に公正な世界を目指す運動の概念を示します。これは事例とは違うでしょうね。

選択肢4 正答。ソーシャルインクルージョンは , 「全ての人々を孤独や孤立,排除や摩擦から援護し,健康で文化的な生活の実現につなげるよう,社会の構成員として包み支え合う」という意味ですね。これは事例にぴったりだと思います。

選択肢5 誤り。なんだこれ??と思って調べたら「社会構成主義」のことみたいですね。社会構成主義は, 現実の社会現象や, 社会に存在する事実や実態, 意味とは, すべて人々の頭の中で(感情や意識の中で)作り上げられたものであり, それを離れては存在しないとする考え方です。ソーシャルワークの中では, ナラティブ・アプローチなどがこの考え方を応用したものとして有名です。ナラティブ・アプローチはクライエントが「自己」について否定的なストーリーを抱き, それを変えることができない状況下でクライアントをエンパワメントすることを目標にしています。例えば「おれは駄目な人間なんだから何をしても意味がない」このようにクライエントのなかで確立しているストーリーをドミナント・ストーリーといいます。援助の過程の中で, ドミナント・ストーリーを解体し, クライエント自身が新たにオルタナティブ・ ストーリー構成していきます。これも事例とは少し離れていますねー。

カテゴリー: 第27回精神専門科目, 精神保健福祉相談援助の基盤 パーマリンク