第27回–精神専門30–32

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(精神保健福祉相談援助の基盤・事例問題1)
次の事例を読んで, 問題30から問題32までについて答えなさい。
〔事 例〕
Cさん (37歳, 男性) は, 精神的不調で苦しむことがありながらも, 何とか大学を卒業し, 旅行代理店に就職した。しかし顧客とのトラブルをきっかけに半年ほどで退職, その後精神科病院を受診し統合失調症と診断され, 半年間の入院となった。退院後は, アルバイトとして働いたが長続きせず, 病状悪化により入院, これまでに3回, 同じパターンを繰り返してきた。1年半前に退院してからは症状も安定し, 一人暮らしには慣れてきたが, 人との交流は少なく, 活動範囲は限定されていた。また過去の失敗経験から, 仕事に対する自信がなく, 今後の生活についての具体的な目標も持てずにいた。そこでCさんは, 通院した際, 担当であったD精神保健福祉士に現状を報告し, 「先が見えません。私だけ特別でしょうか。他の人はどうやって生活しているのでしょうか」と今後についての助言を求めた。(問題30)
その後, Cさんは生活に対して前向きに考えられるようになっていった。ある日, 通院先の待合室で,入院時に同室であったEさんから声をかけられた。Eさんは現在, ピアサポーターとして活動しており, Cさんにその内容や役割について話した上で, 「今度, ピアサポーター養成誰座を受講してみない?Cさんは聞き上手だからきっとうまくいくと思うよ」と勧めた。後日Cさんは, 「自分にできるだろうか」と悩んだ末に受講を決めた。その後経験を積んだCさんは, 当事者の集まりや地域活動支援センター等で, 相談に乗ったりアドバイスをしたりする活動を行っているもCさんは, 久しぶりに会ったD精神保健福祉士に, 「他の人の相談に乗ることで自信がついてきましたし, 生活に張りを感じます。何よりも私自身が成長していると思います」と語った。(問題31)
さらに, 「以前は, どこかに就職しなければと考えることが多かったのですが, 今は, ピアスタッフとして活動できるようになることが目標となりました。まだ具体的ではないですが, 近い将来, 通信課程で精神保健福祉士の資格取得に挑戦してみたいと思っています」と, 力強く笑顔で話した。(問題32)

さて, 事例問題なので3問一気に行きます!!

問題30 次の記述のうち, この時点でのD精神保健福祉士の助言内容として, 最も適切なものを1つ選びなさい。
1 セルフヘルプグループに参加すること。
2 地域障害者職業センターで職業評価を受けること。
3 公共職業安定所 (ハローワーク) で求人情報を収集すること。
4 精神科デイ・ケアに通所すること。
5 就労移行支援事業所を利用すること。

これはなんとなくわかったと思いますが。。。「退院後は, アルバイトとして働いたが長続きせず, 病状悪化により入院, これまでに3回, 同じパターンを繰り返してきた」という事例からも, 今までのようなパターンを繰り返さないための社会資源の活用が必要になると思います。「私だけ特別でしょうか。他の人はどうやって生活しているのでしょうか」という本人の思いに答えるという選択肢は1しかありませんね。

もちろん, その他の選択肢も誤りということではないと思います。

問題31次のうち, Cさんの発言に関する内容として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 カウンセリング
2 体験的知識
3 アイデンティティ
4 パートナーシップ
5 へルパーセラピー原則

選択肢1 誤り。「カウンセリング」はピアカウンセリングという意味では誤ってはいませんが, カウンセリングをすることで本人自身のエンパワメントが高まっていると考えるとCさんの状況からは少し遠い様に思います。

選択肢2 誤り。体験的知識とは, セルフヘルプグループ等の仲間の体験を含めた知識を示します。これもちょっとCさんの状況からは遠いと思います。

選択肢3 誤り。 アイデンティティは, 「自己同一性」ですね。これは明らかに誤りです。

選択肢4 誤り。パートナーシップとは, 当事者主体の対等な関係性などの意味を示します。Cさんの行っているのは, ピアサポートなのでちょっと意味が異なってきますね。

選択肢5 正答。ヘルパーセラピー原則とは, リースマンが提唱した用語で,  助ける者が癒されるという原則 のことです。Cさんの状況に当てはまっていると思います。

問題32 次のうち, この事例においてCさんがたどった過程全体を表わす言葉として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 フィードバック
2 アカウンタビリテイ
3 コンピテンス
4 メインストリーミング
5 リカバリー

これは用語問題という感じでしょうか。難易度は比較的低かったかもしれません。

選択肢1 誤り。ソーシャルワークにおけるフィードバックとは, 「結果を評価しつつ, 目標達成に資するように情報化して差し戻すこと」と言えます。これは事例とは直接の関係はありません。

選択肢2 誤り。アカウンタビリティとは, 説明責任を意味する用語です。明らかに検討はずれな選択肢だと思います。

選択肢3 誤り。コンピテンスとは, 利用者の自己能力とかそういう意味合いの用語です。ソーシャルワークを通じてコンピテンスを高めて行くという意味では事例と離れているというわけではありませんが, ぴったりという感じでもありませんね。

選択肢5 正答。リカバリーとは, 「障害のある人が, それぞれ, 自分が求める生き方を主体的に追求すること」です。これは事例にぴったりあったプロセスだと思います。

事例問題だと3問は結構簡単に進みますねー。今日はここまでー。

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