第25回-精神専門45

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Mさん (25歳, 女性) は, 「精神科を受診したい」と市役所のN精神保健福祉士のもとを訪れた。3週間前に夫を交通事故で亡くしたMさんは, 葬儀後, 何かしなければと思うのだが, 気持ちの整理がつかずにいる。1週間前からは過呼吸 (過換気) 発作が出て, 子どもの世話が思うようにできなくなっているという。N精神保健福祉士は, Mさんが悲しみの感情を十分に表出できるよう耳を傾けた。さらに, 1歳になる娘の預け先が見つからず職探しに取り組めていないというMさんに, 市内の精神科医療機関の紹介とともに, 市の子育て支援制度の利用を支援した。
次のうち, N精神保健福祉士の用いたアプローチとして, 適切なものを1つ選びなさい。

1 危機介入アプローチ
2 ナラティブアプローチ
3 課題中心アプローチ
4 行動変容アプローチ
5 心理社会的アプローチ

単文事例ですが, 事例というよりも, 精神保健福祉士のアプローチモデルに対する知識が問われている問題ですね。どちらかというと相談援助の基盤で出題されるべき内容だと思いますが。。。

選択肢1  危機介入アプローチとは, 危機状態にある対象者(個人, 集団, 組織, 地域など)に対して,その状態からできるだけ早く脱出することを目的に迅速かつ直接的に行われる援助。

リンデマンの危機理論を元にしたアプローチで, キャプランらは, 身体的・心理的・社会的にホメオスタシス(恒常性)のバランスを崩した状態に迅速に介入することで, 通常の安定した状態にいち早く戻す事でが大事であると考えました。

事例はリンデマンの急性悲嘆反応と非常に近い内容です。夫の死をきっかけに情緒的場なバランスを失っているMさんに対して, 迅速な援助を行っています。バランスを失った状況を継続しなくて済むような援助が求められた時に有効なアプローチだと思います。

選択肢2 ナラティブは, 物語という意味です。社会構成主義の視点をソーシャルワークに応用した援助方法であり, ホワイト, エプストンなどが有名です。

ナラティブ・アプローチはクライエントが「自己」について否定的なストーリーを抱き, それを変えることができない状況下でクライアントをエンパワメントすることを目標にしています。例えば「おれは駄目な人間なんだから何をしても意味がない」このようにクライエントのなかで確立しているストーリーをドミナント・ストーリーという。援助の過程の中で, ドミナント・ストーリーを解体し, クライエント自身が新たにオルタナティブ・ ストーリー構成していきます。設問とは少し遠いアプローチですね。

選択肢3 課題中心アプローチは, プラグマティズム (実用主義) を元にしたアプローチでリード, エプスタインが有名です。クライエントの訴える問題を優先し,利用者と援助者が協力して解決しやすい方法を探る。計画的短期性(planned brevity)が重要です。例えば, 友人関係が困難で学校に行けないなどのニーズの時に, 「来週までに挨拶をする」などの課題志向型のアプローチをして行きます。このアプローチの特徴はクライアントが問題としたものにしか援助の焦点を向けない点にあります。

事例とは, 比較的近いかなあと印象も持ちましたが, 本人のニーズが自分で明確にできる状態ではないのでちょっと遠いでしょうか。

選択肢4 行動変容アプローチは, 学習理論に依拠した実践モデルであり, 利用者の問題行動の原因や動機にさかのぼることをせず, 問題行動そのものを取り上げて, 特定の問題行動の変容を目標に働きかける技法です。トーマスが有名。例えば飲酒の問題があるクライアントに酒を飲む理由や背景をみるのではなく, 飲みたくなったらどうするかというように問題行動そのものの変容を学習してもらうことが目標となります。事例とはほとんど重なる部分はありませんね。

選択肢5  心理社会的アプローチは, ホリスが有名ですね。 リッチモンド診断主義ケースワークに立脚しています。彼の言う「状況における人」とは, クライエントと環境との間を意識的に調整し, その人物のパーソナリティの変容・発達を図るという意味合いで捉えればいいかと思います

今日も2問。いい感じで進んでいます。

 

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第25回-精神専門45 への1件のフィードバック

  1. ピンバック: seebychloe

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