第28回-共通科目32

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問題32 コミュニテイや市民社会に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 マッキーヴァー (MacIver, R.) は, 教会, 学校, 会社のような意図的につくられた機能的・結社的集団をコミュニティとして捉えた。
2 ペストフ (Pestoff, V.) は, 現代社会においては政府も市場もコミュニティもそれぞれが機能不全に陥っているため, 個人主義を徹底することが必要であるとした。
3 ロールズ (Rawls, ].) は, 共同体の共通善や歴史的な価値を重視し個人に先立つ共同体を重視するコミュニタリアニズムの思想を説いた。
4 トクヴィル (Tocqueville, A.) は, 1830年代のイギリスの社会の観察を通じて, 市民社会の核心は中間組織としての多様な自発的結社にあるとした。
5 ウェルマン (Wellman.B.) は, 各個人が空間の縛りを離れ選択的に粋を築いていくとする, 新しいコミュニティの可能性を説いた。

うわあ。同年かぶり問題ですね。ロールズは問題23、マッキーバーのアソシエーションは問題19で出題されています。こういうのって嫌いだなあ。国家試験って科目ごとのバランスがいつも悪いけど、こういうのって総括している人いないのかな。
選択肢1 誤り。協会、学校、会社のように意図的に作られた機能的、結社的集団はアソシエーションとして捉えています。ちなみに、マッキーバーは他の社会学者と違って「家族」もアソシエーションとして捉えていることが特徴の一つです。

選択肢2 誤り。ペストフは社会を構成する領域としてのコミュニティ, 国家, 市場, 第3セクターをトライアングルに表し, 第3セクターの媒介機能を重視したトライアングルの理論で有名な社会学者です。問題の機能不全、個人主義の徹底とは異なっていますね。

選択肢3 誤り。これは難しいけど、この問題に出てましたね。こちらを参考にしました。コミュニタリアニズム は, 20世紀後半のアメリカを中心に発展してきた共同体(コミュニティ)の価値を重んじる思想で、「史的に形成されてきた共同体の伝統の中でこそ個人は人間として完成され,生きていけるとする」という特徴を持ちます。ロールズの『正義論』が想定する「自由な個人」が, 共同体へのコミットメントぬきの「負荷なき自我」に他ならないと批判したサンデルがその代表格でしょうか。

選択肢4 誤り。トクヴィルはアメリカ合衆国を調査旅行し、『アメリカの民主政治』を著した社会学者です。有名な学者ですが、ちょっとここで彼の理論をすべて説明するのはしんどいのでやめておきます。選択肢は誰かな?バハーマスのことを言っているのではないかと思うのですが。

選択肢5 正答。これは24回の問題に出題されていたと思います。コミュニティ研究では、テンニース、パーク、ワースなどは近代における社会システムの大規模な分業の発展を経て, 都市におけるコミュニティは地域的・共同的連帯が弱まったとするコミュニティ衰退論を提唱しました。一方、ホワイトやガンスなどは、大規模な分業の発展が状態としてあるにもかかわらず, 地域的・共同的なつながりは維持されているというコミュニティ存続論の立場に立ちます。ウェルマンは、人々のつながりは, コミュニティ衰退論のように失われてしまったのではなく, また地域的な枠組みの中だけで収まるものでもないとしました。すなわちその親密な絆のネットワークは, 交通手段の発達・通信手段の発達等によって, 地域という空間的枠組みを超えた範囲でつながり続けている, と捉え、コミュニティ解放論という新たな視点を提唱しています。

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