第27回-社会専門117

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問題117 事例を読んで, B社会福祉士の助言として, 適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
病院の医療相談室の主任を務めるB社会福祉士は, 後輩のC社会福祉士から実践事例を研究会で発表するためのアドバイスを求められた。C社会福祉士は, 退院後の独居生活に強い不安を抱く入院患者のDさんと一緒にエコマップを描くことで, Dさんの不安を軽減させ, Dさん自身が退院後の生活を前向きにとらえることができるようになった実践事例をまとめようとしていた。

1 事例は匿名化すれば, Dさんからの了承は得ずに事例研究を行ってもよい。
2 この研究は質的研究なので, グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて効果測定のための考察をする。
3 この質的研究では, 不安がなぜ, どのように軽減したのか, そのプロセスを丁寧に考察する。
4 一事例の事例研究ではエビデンスにならないので, 研究デザインを量的研究に変更する。
5 この研究は事例を使った質的研究なので, 単一事例実験計画法を用いてDさんとC社会福祉士の援助関係を深く考察することが有効である。

事例提供に関わる設問ですね。これもよく読めばうさんくさいところは抽出できたと思います。

選択肢1 誤り。事例提供をする際には, 匿名化し, 本人を特定できないように改変したうえで, 更に本人の事前に承認を得なけばなりません。

選択肢2 誤り。グランデットセオリーは, 非常にざっくりというと, 質的なデータから一般化できる理論を構築しようとする研究法です。効果測定のためには利用しにくいと思います。

選択肢3 正答。次の選択肢の解説とも関係しますが, あくまで事例提供なので, 量的に一般化された理論を構築することはできません。個別の事例研究においては, 「プロセスを丁寧に考察」することが重要な視点の一つだと思います。

選択肢4 誤り。確かにエビデンスにはなりませんが, 事例研究が量的研究に劣っているというわけではありません。選択肢3のようなアプローチを重ねていくことの重要性もあると思います。

選択肢5 誤り。単一事例実験計画法は2回目の出題ですね。これは, シングルシステムデザインとも言われます。実践の効果を科学的に測定するために, 一事例を対象に介入の効果を測定する方法です。これは介入前のベースラインを元に介入後の効果を検討するものなので事例とは異なっていると思います。

さて今日もあと一問!

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