ゼミのアウトプット(学会・英語論文・卒論)

ゼミで行った研究成果などのアウトプットです。

学会発表、英語論文、卒論発表会の抄録などなど。なにかコメントいただける方は気軽にこちらまで。

2020年度の記録

※現在進行中


2019年度の記録

卒論発表会抄録

データの活用を歓迎します。興味を持っていただいた方は、気軽にこちらまで連絡ください。

高校野球における理想のキャプテンのあり方 : フォロワーの目標志向性に着目して

集団課題がフォロワーシップに及ぼす影響について: リーダーシップの行動認知に着目して

対人不安と完全主義認知が演奏不安に及ぼす影響: 大学生のオーケストラに着目した場面想定法実験

視線取得や評価懸念が羞恥感情や共感性羞恥に与える影響

人は冠婚葬祭の費用選択においても程よさを求めるのか:情熱は 妥協効果とゴルディロックス効果に着目して

大学生がアルバイトに求める条件とは: 職業選択動機と承認欲求に着目して

日本人大学生のクレジットカードに対する態度: お金に対する信念に着目して

Instagramの投稿者の差異が商品や企業に対するイメージに与える影響   →最優秀論文賞受賞。

学会発表 (九州心理学会 in 熊本)

Youtuberに対する認知に個人特性が与える影響 (もいち)

自分に優しい優しい人は他人にも優しいか: 他者の失敗に対する認知にセルフ・コンパッションが与える影響  (シグナル)

LINEプロフィールアイコンの変更行動における自己呈示と対人認知  (即断即決)

英語論文発表の記録 (と僕の感想)

Capraro, V., Jagfeld, G., Klein, R., Mul, M., & de Pol, I. van. (2019). Increasing altruistic and cooperative behaviour with simple moral nudges. Scientific Reports, 9(1), 1–11. https://doi.org/10.1038/s41598-019-48094-4

自己中心的行動と社会的行動の対立は、大気汚染の削減や希少資源の再分配など、現代の多くの主要な問題の核心にある。したがって、我々の社会の福祉のためには,利己的な選択よりも社会的選択を促進するメカニズムを見出すことが重要である。そのため、安価で実施が容易なメカニズムであり、選択を禁止したり、経済的インセンティブを大きく変えることなく人々の行動を変えることができる、いわゆる「ナッジ」が重要である。これまでの研究では、道徳的ナッジ (例えば、規範を際立たせること) が社会的行動を促進することがわかっている。しかし、その効果が時間とともに持続し前後関係を越えて広がるかどうかについてはほとんど知られていない。そこで本研究においては、研究1~4 (合計N=1,400) で、経済ゲームを用いて、被験者に自己申告「道徳的に正しいと彼らが考えること」を求めることが、直後の選択においてのみならず、その後の選択においても、また社会的状況が変化した場合でも、社会性を高めることが可能であると実証した。研究5では、大規模なクラウドファンディングキャンペーン(N=1,800)において、道徳的なナッジが人道団体への慈善寄付を促進するかどうかを調査し、このような状況で、道徳的なナッジが寄付を約44%増加させることを発見した。

道徳的な規範について考えるだけで、実際に向社会行動が上昇することをWeb調査で検討した研究。分析手法等々は比較的簡単だったけど、Nの迫力もあって読み応えがあった。一度道徳的行動を「ナッジ」することでその効果がスピルオーバーし、持続するという話だったけど、持続性という意味では、その期間はとても短く設定されているので、ここらへんは今後の課題という感じ。おもしろい論文だった。

Verheijen, G. P., Burk, W. J., Stoltz, S. E. M. J., van den Berg, Y. H. M., & Cillessen, A. H. N. (2018). Friendly fire: Longitudinal effects of exposure to violent video games on aggressive behavior in adolescent friendship dyads. Aggressive Behavior, 44(3), 257–267. https://doi.org/10.1002/ab.21748

これまでのゲームの影響に関する先行研究では、仲間関係が次第に顕著になる発達期である青年期に焦点を当てられてきた。しかしながら、青年期における暴力的なゲームの仲間の影響については十分に研究されていない。本研究は、青少年の暴力的なゲームへの露出が1年後の彼ら自身の攻撃性および彼らの友人への攻撃性を予測するかどうかを検討した。ゲームをしている青少年705人の中で、141組のペアが互いの親友の指名に基づいて特定された(男性73.8%、平均= 13.98歳)。行為者―パートナー相互依存モデルを用いた検討では、青年期の男性の暴力的なゲームへの露出が、1年後の親友への攻撃性を有意に予測することを示した。また、この効果は、友達が一緒にビデオゲームをしたかどうかに関係なく現れた。本研究は、暴力的なゲームと攻撃性の関連における仲間の重要性を示している。

行為者―パートナー相互依存モデル(Actor-Partner Independence Models)を用いて、暴力的なビデオゲームへの露出と攻撃性の関連を1年のスパンで検討した研究、ペアデータの縦断研究なのでかなり情報価値の高い。自分の暴力的ゲームへの露出時間は、一年後の攻撃行動を予測しない (一般的に言われているのとは違うね) 一方で、友人の暴力的ゲームへの露出時間が、一年後の攻撃行動を予測するという面白い結果だった。ところで、この研究ではそれぞれ一番親友と思う人をクラスの中で選んでもらうんだけど、その一致率がすごい低くてそれが一番印象に残ってしまった。

Bonefeld, M., & Dickhäuser, O. (2018). (Biased) Grading of Students’ performance: Students’ names, performance level, and implicit attitudes. Frontiers in Psychology, 9(MAY), 1–13. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.00481

ステレオタイプ(たとえば、移民のバックグラウンドを持つ学生は潜在能力が低いという仮定)により、生徒のパフォーマンスに対するサポート前の教師の評価のバイアスが生じる場合がある。本研究では、教員のステレオタイプが移住者のバックグラウンド、パフォーマンスレベル、および移住者のバックグラウンドを持つ個人に対するパフォーマンス評価に与える影響を調べた。就職前の教師(N = 203)は、移民のバックグラウンドを持っているように見える生徒 (典型的な名前で操作) のパフォーマンスを、移民のバックグラウンドを持たない生徒のパフォーマンスよりも著しく格付けした。またその違いは、パフォーマンスレベルが低いときや教師が移民の背景を持つ個人に対して肯定的なステレオタイプを保持していたときに、より顕著となった。

トルコ系移民の多いドイツで行われたステレオタイプに関する研究。移民か否か、 成績が良いか悪いかを条件にして、それを採点させるみたいな手法。これも手間暇かかってるねえ。想像どおり、移民に対してネガティブな評価をすることや、元々ステレオタイプを持っている人ほど、成績の悪い移民の生徒に対しての評価が低くなることなどが明らかとなっている。いわゆるローゼンタール効果みたいなことも考えるとこういう研究は非常に重要なんだろうなあ。

Wang, X. T., Li, A., Liu, P., & Rao, M. (2018). The relationship between psychological detachment and employee well-being: The mediating effect of self-discrepant time allocation at work. Frontiers in Psychology, 9(DEC). https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.02426

これまでの研究では、働く人の幸福に対する、心理的分離の利点を示しているが、この効果のメカニズムは明らかとなっていない。そこで本研究では、心理的分離が従業員の幸福に影響するメカニズムとして、自己不一致時間配分 (好ましい Vs 実際の時間配分) について検討した。まず、心理的分離は仕事における自己不一致時間配分と関係があると考え以下の仮説を検討した。まず、心理的離脱が少ない従業員は、より少ない自己制御資源を必要とする仕事に対して自分の理想よりも多くの時間を配分し、より大きな自己制御資源を必要とする活動に自分の理想よりも少ない時間を配分する傾向があると考えた。また、仕事におけるこれらの自己不一致時間配分は、従業員の幸福と関係があると仮定した。19の大学の390人の大学教員のサンプルに基づく調査の結果、週末の心理的離脱が少なく、自己制御資源が不十分な場合、従業員は次の勤務期間中に、自己制御資源をより多く必要とする活動(研究活動)に割く時間が理想よりも少なくなることが示された。代わりに、従業員はより少ない資源(すなわち、教育活動)を必要とする作業により多くの時間を割り当てる傾向があった。これらの結果から仕事のための、実際の時間配分と好ましい時間配分との間の不一致は、次々に従業員の幸福に負の影響を与え、心理的分離と従業員の幸福の間の関係を仲介することが明らかとなった。

大学教員を対象としたおもしろい研究。心理的離脱ってのは、仕事から離れたリラックスした時間のこと。この時間が少ない場合には、認知資源が枯渇するため、より単純な仕事 (この研究で言うと、教育とか公務とか) に時間を割り振り、充分な場合には、複雑な仕事 (ここで言うと研究) に時間を割り振る。そしてこれらの割り振りのバランスの悪さ (例えばもっと研究したいのにその時間が取れない)みたいなものが精神的健康に悪影響を与えるというもの。結果はクリアに出ているんだけど、この研究の弱点は、結局理想の時間と実際の時間という主観的な指標で検討しているところかなあと、理想の時間は、結局は自分の認知なので、精神的に不健康な人は、理想の時間と実際の時間のバランスを悪く見積もるだろうなあというある種トートロージーな結果であるかもしれない。ただ、心理的離脱と制御焦点との関係は直感的にはよく理解できた。実際、研究に集中しないと行けないときに、どうしても集中できずにどうでもいいメールをすぐに返すこともあるよなあ。。

Rice, W. S., Turan, B., Stringer, K. L., Helova, A., White, K., Cockrill, K., & Turan, J. M. (2017). Norms and stigma regarding pregnancy decisions during an unintended pregnancy: Development and predictors of scales among young women in the U.S. South. PLoS ONE, 12(3), 1–18. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0174210

妊娠の決定に関する規範とスティグマ(育児・養子縁組・中絶)は、特に意図しない妊娠をした母体の健康に顕著な影響を与える。しかし、妊娠の決定に関する規範とスティグマの関係についての検討はほとんど行わていない。そこで、本研究では、まず、予備調査において、妊娠決定に関する規範とスティグマの測定を作成するために、97の調査項目を開発した。その後本調査を、642人の成人女性に実施した。因子分析、信頼性分析、独立t検定および相関分析を行い、スケールの信頼性と妥当性を確立し、回帰分析を用いて、人口統計学的予測因子を同定した。因子分析の結果、それぞれの妊娠決定(育児・養子縁組・中絶) に対し4種類のサブスケール(条件的受容性、予想される反応、ステレオタイプ・誤解および態度)で構成された。各尺度の平均スコアは、関連する尺度と相互に有意に関連し、社会人口統計学的特性によってそのパタンは異なった。大学生の女性と白人女性は、子育てに関してより否定的な態度とスティグマを示した。マイノリティの女性たちは、養子縁組をめぐるより否定的な規範やスティグマを示した。最後に、保健部 (??) の女性、白人女性、宗教的女性は、中絶に関してより否定的な規範とスティグマを表明した。

妊娠に関する規範の尺度の開発を作成して、その他の尺度の信頼性妥当性をチェックしたもの。女性が他者の妊娠に関連した行動 (育児するとか、中絶するとか、養子縁組する) とかに対して、どのようなイメージやスティグマを持っているのかを丁寧に検討した研究。尺度の作り方はとても丁寧にで、デモグラフィック変数との関係についても詳しく見られている感じだが、仮説検討型ではなく、探索的にやってみた研究という感じ。おそらくアメリカ南北の文化の影響が人種や学歴などの影響も大きいんだろうなという印象。ここらへんの論文は日本語ではみたことがないなあ。

Nordby, K., Løkken, R. A., & Pfuhl, G. (2019). Playing a video game is more than mere procrastination. BMC Psychology, 7(1), 1–12. https://doi.org/10.1186/s40359-019-0309-9

先延ばしは若者の間で深刻な問題と見なされており、ビデオゲームをプレイすることもその要因の1つであると捉えられている。ビデオゲームが先延ばしに関連する理由の1つは、それが即座の満足とフィードバックを提供すると同時に、魅力的でやりがいのない課題から気を散らすことができることが挙げられる。一方、ゲームをする人が先延ばし傾向が高いかどうか、また、将来の報酬を割り引いたりする傾向 (時間割引) が強いかどうかについては、まだ明らかとなっていない。本研究では、500人以上の参加者が、ビデオゲームの習慣に関する2つの調査と、先延ばし傾向の測定を行った。研究1の参加者は経験的割引タスク、研究2の参加者は調整遅延ディスカウントタスクを実行した。その結果、研究1では、ビデオゲームの時間は先延ばしや割引率とはあまり関係しておらず、研究2では、ビデオゲームの時間は先延ばしや遅延割引とも強く関連していなかった。一方、ゲームをプレイする理由に着目した結果、現実からの脱出とストレスの軽減を理由としてあげる人は、娯楽、報酬、社会的理由のために遊ぶ人よりも先延ばしの問題を抱えており、全体的に、先延ばしとビデオゲームのプレイ時間の関係は弱い正の相関を示した。
この結果からは、現実からの脱出とストレスからの脱却のためにプレイする人は先伸ばし傾向が高い一方で、その他の理由でゲームする人は必ずしも先延ばしとは関連しないことを示している。これらの調査結果は、ゲームに費やされた時間が必ずしも先延ばしなどの負の結果に関連するとは限らないことを示している。

テレビゲームの時間が必ずしも個人の先延ばし傾向と関連しているとは限らないよという論文。研究1のタスク型の従属変数は面白かった。全体としては、ちょっとゲーム時間をひとまとめにしているので分析はちょっと大雑把だなあという印象。やらなければならないことを先延ばすために使うゲームってなんだろう?ぷよぷよとかかな。でも、明日までの課題を先延ばしにして、ファイナルファンタジーはしないよな、というかもしそうだとしてそれって先延ばしと言えるのかみたいなことを考えていた。

Vollmann, M., Sprang, S., & van den Brink, F. (2019). Adult attachment and relationship satisfaction: The mediating role of gratitude toward the partner. Journal of Social and Personal Relationships, 36(11–12), 3875–3886. https://doi.org/10.1177/0265407519841712

先行研究では、不安定な愛着(とりわけより高いレベルの回避型愛着と不安型愛着)が関係満足感と否定的に関係していることが示されている。本研究は,交際しているパートナーへの感謝に着目しその媒介役割について調査した。横断的デザインを用い,恋人関係を持つ362人の参加者(84%が女性、年齢範囲18–70歳)を対象に,オンライン・アンケートを用いて、回避型愛着と不安型愛着、パートナーへの感謝と関係満足感を測定した。回帰分析の結果、回避型愛着と不安型愛着が関係満足感にネガティブな影響を及ぼした。また、媒介分析を用いて、パートナーへの感謝の媒介効果を検討したところ、不安型愛着ではなく、回避型愛着の場合に否定的な否定的な間接効果を示した。これらの結果は、回避型愛着のレベルが高いほど、パートナーへの感謝が少なくなり、関係の満足度が低くなることを示した。これらの調査結果は,カップル療法において高い回避型愛着状態にあるクライアントへ「感謝への介入」を行うことが有効であるかもしれないことを示唆している。

シンプルなデザインの研究、今までの研究では、不安定な愛着スタイルが関係満足度に影響を与えるということがわかっていたが、そこに「相手への感謝」という媒介変数を加えて検討したもの、感謝の媒介効果は不安定型愛着では認められなかったが、回避型愛着場合には、結構関連しているみたい。まあ、回避型愛着の場合は自分を守るために両者の関係を重要なものと考えないようにするということを考えれば妥当な結果かなという印象。そもそも感謝とかを意識しないのかなあ。恋愛に関する論文は初めて読んだけど、結構面白いね。

Freire, C., Ferradás, M. D. M., Núñez, J. C., Valle, A., & Vallejo, G. (2019). Eudaimonic well-being and coping with stress in university students: The mediating/moderating role of self-efficacy. International Journal of Environmental Research and Public Health, 16(1). https://doi.org/10.3390/ijerph16010048

大学生の間でストレスが高い割合で存在するにもかかわらず、学術的ストレスの予防における心理的資源の重要性は、現在までほとんど注目されてこなかった。本論文では、学業ストレスに対処するため使用する、ストレスコーピング対する「真の幸福」の効果を分析し、さらに、自己効力感の媒介、調整の機能について分析する。スペインの大学の1402人を対象に質問紙方を用いて、調査を行った結果、自己効力感は、真の幸福とストレスコーピングの間の関係を部分的に媒介することが明らかとなった。この結果からは、大学生の学術的ストレスへの効果的な対処を強化するためにこれらの2つの個人的資源を使用する利点を明らかにした。

eudaimonic well-beingってのがちょっとわからなかったんだけどEudaimoniaは自己実現や生きがいを感じることで得られる幸せとのことなので、学生は真の幸福と翻訳してくれた。内容は、結構オーソドックスなもので、ベイシックなレベルで幸福感を感じている人は、問題解決場面で高度な解決方略を持つが、そうでない人はな雑な問題可決をするだろう。なぜならは前者は自己効力感が高いからだ!みたいな感じの論文。ちょっとこういうタイプの研究は概念をいじくり回してるだけみたいな印象もあるんだけど、重回帰分析と媒介分析が丁寧にされていて、調整と媒介の違いを学生と一緒に議論するという意味ではテーティングに良い論文だったかな。

Moeini-Jazani, M., Albalooshi, S., & Seljeseth, I. M. (2019). Self-affirmation reduces delay discounting of the financially deprived. Frontiers in Psychology, 10(JULY), 1–13. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.01729

経済的な貧しさと遅延報酬の過度な割引には関連性があることが知られている。本研究では、この非生産的な傾向 (おそらく遅延割引) が、少なくとも部分的には、 貧しさの経験で生じる逃避的・自己脅迫的な性質によって引き起こされている可能性について論じた。そのため、心理的脅威の負の影響を緩和すると知られている自己肯定 が、経済的に恵まれない人々の時間割引を減少させる可能性があること仮説とした。本研究の2 つの実験結果は、以上の仮説を支持した。特に、研究 1(n=546)では、相対的に低所得の参加者で、自己肯定 が時間割引を効果的に減少させることを示した。 研究 2(n=432)では、貧しさを感じる度合いを実験的に操作し、自己肯定が貧しさを感じた人々の間で時間割引を減少させることを示した。 また、この効果の基礎となるプロセスを 検討するとともに、自己肯定が貧しさを感じる人々の自己統制感を強化し、その結果、時間割引が減少することを見 出した (研究 2)。 全体として、本研究では、経済的な貧しさと時間割引の関係には関係があることを示し、自己脅迫性を軽減して 自己統制感を強化する心理的介入 (自己肯定感をあげること)が貧困層の近視眼的傾向(おそらく遅延割引) の軽減に適用できることを示唆した。

そもそも経済的に恵まれない人は、時間割引率が高く、結果として近視眼的に非生産的な傾向が高いが、それに関連しているのが自己肯定であるとう視点に立った実験的検討。研究1ではもともとの所得と実験的に操作した自己肯定の関係について検討し、研究2では、相対所得と自己肯定感を操作することでそこに関連する概念として自己統制感の媒介効果を確かめるという流れ。自己肯定することでポジティブな気分になるというよりもむしろ、自己肯定が自己統制感を向上させることによって、時間割引を減少させるという流れ。この実験でいう自己肯定の定義にはちょっともやっとするとこもあったけど、非常にクリアに結果も出ているので、このまま卒論とかで追試してもいいなあと言う感じ。難しい分析もないし、こういう論文は読んでて面白い。

 


2018年度の記録

学会発表 (九州心理学会 in 長崎)

課題の重要度がセルフハンディキャッピングに与える影響  (hige-hie)

集団討議における同調行動に自己肯定感が及ぼす影響 (心配)

Instagram における「いいね」が大学生の孤独感及び承認欲求に与える影響
(へっぽこ)

期待の表明と2者関係がモチベーションに与える影響
(小池澄人・井川純一)

英語論文発表の記録 (と僕の感想)

Keller, S. B., Kimball, B., Brown, B., Voss, M. D., Keller, S. B., & Brown, B. (2017). Discovering the power of emotional intelligence and organizational identification in creating internal market-oriented supervision. Journal of Transportaion Management, 27(2), 39–58. https://doi.org/10.22237/jotm/1498867440

従業員は会社に大切にされ、また企業理念を理解していれば、よりよいサービスを提供できる(Berry and Parasuraman, 1991)。内部市場志向(IMO)とは、職場で訓練され、会社の企業理念に共感する従業員がいる職場環境を指す。このような取り組みは、より質の高いサービスを提供する従業員を育てる(Lings, 2004)。本研究では、サプライチェーンおよびロジスティクスを背景として、IMO、心の知能(EI)、および組織への一体化(OI)の関連性を検討した。その結果、IMOに対するOIの直接的な影響が示された。また部下の感情管理をサポートする能力のある上司は、自己感情管理能力もあり、内部市場志向の職場環境をつくる能力もある。この結果は、内部市場志向は顧客体験に有益であり、会社にも利益をもたらすことを示唆した。

→管理者のEIと内部市場志向 (IMOこの訳難しいけどいい感じの職場風土のこと) の関係に関する論文で、生産性が高いとされるIMO環境を作りだすための状況を横断的調査で検討したもの。上司のEIが部下のEIに影響を与えていたり、組織への一体化傾向が強い人が、IMO環境を作り出すという直感的な結果が認められた一方で、EIがIMO環境に影響を与えていないという結果が興味深い。論文内では、個人が組織にコミットするためには、EIは重要だが、チーム単位で考えるIMO環境には直接の影響を及ぼさないと考察されていた。

Ruan, W. Q., Li, Y. Q., & Liu, C. H. S. (2017). Measuring tourism risk impacts on destination image. Sustainability (Switzerland), 9(9), 1–15. https://doi.org/10.3390/su9091501

本研究では、観光利益と旅先のイメージとの関連を媒介する要因として、人的リスク及び自然災害リスクについて検討した。観光客の旅先へのイメージが自然災害 (への認知) によってどのように影響を受けるかを考察しするため635人の外国人観光客を対象とした調査を行った。その結果、人的災害に関する観光リスクは観光客が経験した利益とポジティブな感情経験に大きな影響を与えることを示した。外国人観光客のリスク認知は、彼らの利益と感情経験及び目的地のイメージに関連する可能性がある。また、観光客の利益は感情経験と旅先のイメージとの間の関係を媒介することが明らかとなった。これらの結果から外国人観光客の感情経験が観光リスクと旅先のイメージとの間の良い繋がりを促進するための、適度な仲介の結果が示された。

→台湾の観光客に対する調査。ざっくりいうと、自然災害とか人的災害へのリスクを高く見積もっていても楽しい経験ができたり、旅行に行くことそのもの利益が高かったりすれば観光地へのイメージはあまり悪くならないよー。という内容。どうもそれぞれの概念がわかりにくかった。各地の観光地でダイレクトに質問している丁寧な研究で、目的部分では観光地に関連する研究がたくさんレビューされていたので、読み応えがあった。

Caron, J., Tiffanye M., Hawn, S. (2018). Comparing Coaches’ and Athletes’ Perceptions of Coaching Efficacy. Journal of Sport Behavior. 41(3) 351-367.

コーチングエフィカシーやそれらを踏まえた行動は、アスリートに影響を与える。また、アスリートのコーチングエフィカシー認識と同様にコーチ自身のエフィカシーに対する認識も重要である。本研究の目的は、様々なスポーツ分野を対象に、コーチの性別やアスリートからのデータに基づいたコーチとアスリートのコーチジングエフィカシーの類似性を明らかにすることである。コーチと選手それぞれから収集したダイアドデータの分析の結果、コーチ自身の評価とコーチに対する選手の評価との間に違いがあることを示され、コーチは選手が評価するよりも自身のコーチングを高く評価することが報告されている。これらの結果は、コーチとアスリートの認識間の関係性への理解をさらに進めることや、コーチに対するアスリートの認識についてかなりの影響を調査することの必要性を明らかにしている。今後実際のコーチの行動に加えてこの関係性の評価について考えていくことが必要となる。

→コーチとアスリートでコーチング行動に対する認知に差があるかどうかを検討した研究。アスリートの多くがコーチほどはコーチングエフィカシーを感じていないという指導者にとっては少しさみしい結果 (でも逆にそのほうがいいのかもしれない)。基本的には、コーチの指導スタイルが、アスリートの好む指導スタイルと一致するときが最も効果的となんだけど、性別によってコーチングエフィカシー (「動機づけ」「ゲーム戦略」「技能」「人格形成」など) の効果が違うというのが興味深いところだと思った。参加者の数が少ないので、性差の関係 (特にペア) や競技ごとの分析についてはそこまで詳細には触れられていないのが課題。競技によってずいぶん差がありそうだけど、指導者を目指す人は読んでおいて損はないと思う。

Carsten, M. K., Uhl-Bien, M., & Huang, L. (2017). Leader perceptions and motivation as outcomes of followership role orientation and behavior. Leadership, (September). https://doi.org/10.1177/1742715017720306

フォロワーシップの成果は、フォロワーがどのようにフォロワーシップの役割を認知するかによって異なり、リーダーが自らの役割や責任をどのように知覚するにも影響を受けることが知られている。本研究では、役割志向の文脈において近年注目されているフォロワーシップ (共同制作志向、受動的志向) がリーダーシップのアウトカム (フォロワーサポート、リーダーモチベーション、目標達成への貢献と上方への委任行動) に与える影響について検討した。調査は、中国の組織の306人のダイアドのデータを用いた。結果はフォロワーの上方委任が、フォロワーの共同制作と受動的な役割志向をリーダーシップの成果と結びつける関係を仲介することを示した。本研究は、フォロワーの役割志向と行動が、リーダーシップアウトカムに影響を及ぼすことを明らかとした。

→フォロワーシップとリーダーのアウトカム (この論文の中ではリーダーの主観を設定) との関係についての論文。フォロワーシップを、共同制作志向 (パートナーシップ)、受動的志向 (指導者の意見に従う) などに分類して、それらの行動とリーダーの認知との関係をペアデータで分析したもの。分析そのものはそこまで複雑ではなく、直感ともあまり反しない結果と考察だったので、近年のフォロワーシップ研究のレビューとして有用な論文だった。実際の生産性とかの変数が入るとすごいクリティカルな研究になりそうな気がする。

Shahzadi, G., & John, A. (2017). Followership Behavior and Leaders ’ Trust : Do Political Skills Matter ? Pakistan Journal of Commerce and Social Sciences, 11(2), 653–670.

本研究では、フォロワーの積極的な行動と、リーダーとの信頼関係について検討することを目的とした。信頼は、フォロワーとリーダーの友好な関係に最も重要な要素の1つであると認識されており、リーダーの行動に影響を与えることができる。本研究では、大企業のリーダー(中間管理職)とフォロワーに2回にわたって、社内調査を行なった。調査結果として、積極的なフォロワーは、リーダーから信頼されることが示唆された。これは、フォロワーの支持が信頼と結び付ける役割をしていると考えられる。さらに、フォロワーの政治的スキルが両者の関係を良好にすることも示唆された。

→リーダーシップとフォロワーシップについて社会的交換理論にもとづいて検討した横断的研究。リーダーとフォロワーのペアデータで分析しているので、資料的価値が高い。基本的な仮説と結果は直感どおりで、積極的なフォロワーシップを行うことで、リーダーは自分の支持を認識し、部下を信頼する。そしてその関係に影響を与えるのが、フォロワーの政治的スキルという結果。ざっくりいうと人当たりのよい部下が積極的に上司と交流することでどんどん関係は良くなっていくよという感じ。これも実際の生産性などを入れて分析できるとさらに面白いものになりそう。

Hajli, N., Sims, J., Zadeh, A. H., & Richard, M. O. (2017). A social commerce investigation of the role of trust in a social networking site on purchase intentions. Journal of Business Research, 71, 133–141. https://doi.org/10.1016/j.jbusres.2016.10.004

信頼は、オンラインショッピング環境で非常に重要な問題であるが、ソーシャルコマースプラットフォームでは、信頼はより重要な役割を持つ。本研究では、ソーシャルコマースへの信頼と購買意欲との関係を調査し、そのメカニズムについて説明することを目的とする。その際、ソーシャルコマース情報探索、プラットフォームへの精通度、社会的存在感という3つの概念に着目した。モデルを比較した結果、信頼性、精通度、社会的存在、およびソーシャルコマース情報探索が、ソーシャルコマースプラットフォームに対する行動意図を左右するメカニズムが明らかとなった。Facebookユーザーを対象とした調査の結果、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)への信頼が情報探索を増やし、それがプラットフォームの精通度と社会的存在感を高め、さらに精通度と社会的存在感は購買意欲を向上させることを示唆した。

→Facebookユーザーを対象に、SNSのプラットフォームへの信頼感と購買行動の関係について検討した論文。SNSと消費に関する研究は結構されているけど、Facebookに限定しているのが特徴。結果は直感的で、SNSへの信頼性や親和性が高いとその中で商品を検索して情報探索したり、購買意欲に影響を与えたりするというもの。特にFacebookにはイイネとかそういうシンプルなインターフェースも影響している可能性についても考察されている。それぞれのSNSの特性に応じた特徴が今後の課題とのこと。

Lin, C. W., Wang, K. Y., Chang, S. H., & Lin, J. A. (2017). Investigating the development of brand loyalty in brand communities from a positive psychology perspective. Journal of Business Research, (August), 0–1. https://doi.org/10.1016/j.jbusres.2017.08.033

フロー理論によると、フローはブランドコミュニティの特性によって生成され、ブランドに対するブランドコミュニティメンバーの態度に影響を与えるのに重要な役割を果たす。 本研究は、フローを生み出すブランドコミュニティの特性(コミュニティの凝集性や情報の質)を明らかにするためのモデルを提案し、フローがどのようにブランドとの一体感やブランドロイヤリティに影響を与えるかを検討した。自動車ブランドコミュニティ31のメンバー580名が調査に参加し、構造方程式モデルを使用して研究仮説を検証した。その結果コミュニティの凝集性と情報の質がブランドイメージにポジティブな影響を与えることを示した。また、フローは実験参加者のブランドとの一体感にポジティブな影響を及ぼし、ブランドロイヤリティに影響を与えることも示された。ブランドとの一体感の構築におけるフローの仲介的な役割も実証された。

→フローは本文中では「何らかの活動を行うときの最適な心理的状態」と書かれている。本文では、車のブランドコミュニティの成員がフローを感じることで、そのブランドに対するイメージが上がったり、一体感を感じたりするということSEM等による分析で明らかにしている。横断的研究という弱点はあるけど、消費者が持つブランドイメージは文化と人のように相互に影響しあっているというような帰結にたどり着くのかもしれない。マカーのコミュニティとかで同じ研究してみるともっと面白い結果だったかも。

Riva, S., & Chinyio, E. (2018). Stress Factors and Stress Management Interventions: the Heuristic of “Bottom Up” an Update From a Systematic Review. Occupational Health Science, 2(2), 127–155. https://doi.org/10.1007/s41542-018-0015-7

本研究では、製造業における主なストレスの原因とストレス管理の介入の有効性をレビューすることを目的としている (製造業のストレス研究に関しては、系統的また具体的な検討が少ない)。4大陸 (アジア、ヨーロッパ、アメリア、南アメリカ)の1次、2次、3次介入に関する22の研究を選択し、ストレス要因、方法論的性質、結果の観点からまとめた。その結果研究のほとんどはRCT研究(68%vs32%)であり、2次介入、次に1次介入、3次介入、2次介入との混合の介入が順に多かった。これらの研究には、心理的健康の改善、ストレス反応の低下、認知行動の方法を利用した介入研究が多数含まれていた。主なストレスの原因としては、職業アイデンティティ、組織的な欠陥、対人関係の葛藤、身体的苦痛、劣悪な職場環境に関連していると報告されている。本研究の結果は、ストレス要因の研究と職場のストレス管理の介入の使用を進める上での理論的及び実践的な意味を与えている研究。データを蓄積していくボトムアップ戦略は、従業員の健康を高める可能性のある手段を提供する。

→製造業のストレス研究のレビュー。結構分量が多かったので発表者は大変だった。基本的には既存のストレスモデルと同じ枠組みと大きな差はないけど、分野によってフォーカスされやすい部分に差があるっていう事実が結構興味深かった。多数の文献が紹介されているので、製造業分野におけるストレス反応 (バーンアウトとかアパシーとかも含む) を研究する人にとっては情報価値が高いなあという印象。

Khan, M. L. (2017). Social media engagement: What motivates user participation and consumption on YouTube? Computers in Human Behavior, 66, 236–247. https://doi.org/10.1016/j.chb.2016.09.024

本研究は、能動的な参加 (コンテンツの発信) と受動的な消費 (コンテンツの閲覧) として概念化されてきたYouTubeのユーザーエンゲージメント行為 (YouTubeのコンテンツに対するユーザーのアクション)の行動の動機を明らかにすることを目的とした。1143人のYouTubeユーザーを対象にオンライン調査を行った結果、動画のlike,dislikeには娯楽的動機、コメントや動画のアップロードは社会的相互作用、動画のシェアには、情報共有動機が関連していた。さらに動画の視聴という受動的なコンテンツの消費は娯楽的な動機、コメントを読むことは情報探索動機と関連していた。また、YouTubeの履歴が高いほど「いいね」に消極的となり、匿名性が動画のシェアとアップロードに影響を与えていることも明らかとなった。性差に関連して、男性は女性に比べてYouTubeの動画にdislikeを押す可能性が高かった。

→YouTubeの機能に着目したWeb調査。こういうのはユーザーインターフェースが変わってしまう速度に研究が追いつかない感じがあるのでなかなか難しい。この研究は探索的な研究で、非常にシンプルな分析だけに情報価値が高く、これからSNS系の研究をする人には結構参考になると思った。You TubeにSNSとしての機能があるのは今まで考えたことがなかったなあ。