ゼミで読んだ英語論文

2018度のゼミ生の英語論文発表の記録 (と僕の感想)
せっかくなので3年後期のゼミが読んだ英語論文の内容を公開します。要約については、Abstを基準に本文の情報も踏まえた超意訳です。本文のレジュメを見たい人がおられたらお気軽に連絡ください。

Keller, S. B., Kimball, B., Brown, B., Voss, M. D., Keller, S. B., & Brown, B. (2017). Discovering the power of emotional intelligence and organizational identification in creating internal market-oriented supervision, 27 (2), 39–58.  http://doi.org/10.22237/jotm/1498867440

従業員は会社に大切にされ、また企業理念を理解していれば、よりよいサービスを提供できる(Berry and Parasuraman, 1991)。内部市場志向(IMO)とは、職場で訓練され、会社の企業理念に共感する従業員がいる職場環境を指す。このような取り組みは、より質の高いサービスを提供する従業員を育てる(Lings, 2004)。本研究では、サプライチェーンおよびロジスティクスを背景として、IMO、心の知能(EI)、および組織への一体化(OI)の関連性を検討した。その結果、IMOに対するOIの直接的な影響が示された。また部下の感情管理をサポートする能力のある上司は、自己感情管理能力もあり、内部市場志向の職場環境をつくる能力もある。この結果は、内部市場志向は顧客体験に有益であり、会社にも利益をもたらすことを示唆した (山口担当)。

→管理者のEIと内部市場志向 (IMOこの訳難しいけどいい感じの職場風土のこと) の関係に関する論文で、生産性が高いとされるIMO環境を作りだすための状況を横断的調査で検討したもの。上司のEIが部下のEIに影響を与えていたり、組織への一体化傾向が強い人が、IMO環境を作り出すという直感的な結果が認められた一方で、EIがIMO環境に影響を与えていないという結果が興味深い。論文内では、個人が組織にコミットするためには、EIは重要だが、チーム単位で考えるIMO環境には直接の影響を及ぼさないと考察されていた。

Ruan, W. Q., Li, Y. Q., & Liu, C. H. S. (2017). Measuring tourism risk impacts on destination image. Sustainability (Switzerland), 9 (9), 1–15. http://doi.org/10.3390/su9091501

本研究では、観光利益と旅先のイメージとの関連を媒介する要因として、人的リスク及び自然災害リスクについて検討した。観光客の旅先へのイメージが自然災害 (への認知) によってどのように影響を受けるかを考察しするため635人の外国人観光客を対象とした調査を行った。その結果、人的災害に関する観光リスクは観光客が経験した利益とポジティブな感情経験に大きな影響を与えることを示した。外国人観光客のリスク認知は、彼らの利益と感情経験及び目的地のイメージに関連する可能性がある。また、観光客の利益は感情経験と旅先のイメージとの間の関係を媒介することが明らかとなった。これらの結果から外国人観光客の感情経験が観光リスクと旅先のイメージとの間の良い繋がりを促進するための、適度な仲介の結果が示された(山之内担当)。

→台湾の観光客に対する調査。ざっくりいうと、自然災害とか人的災害へのリスクを高く見積もっていても楽しい経験ができたり、旅行に行くことそのもの利益が高かったりすれば観光地へのイメージはあまり悪くならないよー。という内容。どうもそれぞれの概念がわかりにくかった。各地の観光地でダイレクトに質問している丁寧な研究で、目的部分では観光地に関連する研究がたくさんレビューされていたので、読み応えがあった。

Caron, J., Tiffanye M., Hawn, S. (2018). Comparing Coaches’ and Athletes’ Perceptions of Coaching Efficacy. Journal of Sport Behavior. 41(3) 351-367.

コーチングエフィカシーやそれらを踏まえた行動は、アスリートに影響を与える。また、アスリートのコーチングエフィカシー認識と同様にコーチ自身のエフィカシーに対する認識も重要である。本研究の目的は、様々なスポーツ分野を対象に、コーチの性別やアスリートからのデータに基づいたコーチとアスリートのコーチジングエフィカシーの類似性を明らかにすることである。コーチと選手それぞれから収集したダイアドデータの分析の結果、コーチ自身の評価とコーチに対する選手の評価との間に違いがあることを示され、コーチは選手が評価するよりも自身のコーチングを高く評価することが報告されている。これらの結果は、コーチとアスリートの認識間の関係性への理解をさらに進めることや、コーチに対するアスリートの認識についてかなりの影響を調査することの必要性を明らかにしている。今後実際のコーチの行動に加えてこの関係性の評価について考えていくことが必要となる(宮本担当)。

→コーチとアスリートでコーチング行動に対する認知に差があるかどうかを検討した研究。アスリートの多くがコーチほどはコーチングエフィカシーを感じていないという指導者にとっては少しさみしい結果 (でも逆にそのほうがいいのかもしれない)。基本的には、コーチの指導スタイルが、アスリートの好む指導スタイルと一致するときが最も効果的となんだけど、性別によってコーチングエフィカシー (「動機づけ」「ゲーム戦略」「技能」「人格形成」など) の効果が違うというのが興味深いところだと思った。参加者の数が少ないので、性差の関係 (特にペア) や競技ごとの分析についてはそこまで詳細には触れられていないのが課題。競技によってずいぶん差がありそうだけど、指導者を目指す人は読んでおいて損はないと思う。

Carsten, M. K., Uhl-Bien, M., & Huang, L. (2017). Leader perceptions and motivation as outcomes of followership role orientation and behavior. Leadership, (September). http://doi.org/10.1177/1742715017720306 

フォロワーシップの成果は、フォロワーがどのようにフォロワーシップの役割を認知するかによって異なり、リーダーが自らの役割や責任をどのように知覚するにも影響を受けることが知られている。本研究では、役割志向の文脈において近年注目されているフォロワーシップ (共同制作志向、受動的志向) がリーダーシップのアウトカム (フォロワーサポート、リーダーモチベーション、目標達成への貢献と上方への委任行動) に与える影響について検討した。調査は、中国の組織の306人のダイアドのデータを用いた。結果はフォロワーの上方委任が、フォロワーの共同制作と受動的な役割志向をリーダーシップの成果と結びつける関係を仲介することを示した。本研究は、フォロワーの役割志向と行動が、リーダーシップアウトカムに影響を及ぼすことを明らかとした(小田担当)。

→フォロワーシップとリーダーのアウトカム (この論文の中ではリーダーの主観を設定) との関係についての論文。フォロワーシップを、共同制作志向 (パートナーシップ)、受動的志向 (指導者の意見に従う) などに分類して、それらの行動とリーダーの認知との関係をペアデータで分析したもの。分析そのものはそこまで複雑ではなく、直感ともあまり反しない結果と考察だったので、近年のフォロワーシップ研究のレビューとして有用な論文だった。実際の生産性とかの変数が入るとすごいクリティカルな研究になりそうな気がする。

Shahzadi, G., & John, A. (2017). Followership Behavior and Leaders’ Trust : Do Political Skills Matter ? Pakistan Journal of Commerce and Social Sciences, 11(2), 653–670.

本研究では、フォロワーの積極的な行動と、リーダーとの信頼関係について検討することを目的とした。信頼は、フォロワーとリーダーの友好な関係に最も重要な要素の1つであると認識されており、リーダーの行動に影響を与えることができる。本研究では、大企業のリーダー(中間管理職)とフォロワーに2回にわたって、社内調査を行なった。調査結果として、積極的なフォロワーは、リーダーから信頼されることが示唆された。これは、フォロワーの支持が信頼と結び付ける役割をしていると考えられる。さらに、フォロワーの政治的スキルが両者の関係を良好にすることも示唆された(増羽担当)。

→リーダーシップとフォロワーシップについて社会的交換理論にもとづいて検討した横断的研究。リーダーとフォロワーのペアデータで分析しているので、資料的価値が高い。基本的な仮説と結果は直感どおりで、積極的なフォロワーシップを行うことで、リーダーは自分の支持を認識し、部下を信頼する。そしてその関係に影響を与えるのが、フォロワーの政治的スキルという結果。ざっくりいうと人当たりのよい部下が積極的に上司と交流することでどんどん関係は良くなっていくよという感じ。これも実際の生産性などを入れて分析できるとさらに面白いものになりそう。

Hajli, N., Sims, J., Zadeh, A. H., & Richard, M. O. (2017). A social commerce investigation of the role of trust in a social networking site on purchase intentions. Journal of Business Research, 71, 133–141. http://doi.org/10.1016/j.jbusres.2016.10.004

信頼は、オンラインショッピング環境で非常に重要な問題であるが、ソーシャルコマースプラットフォームでは、信頼はより重要な役割を持つ。本研究では、ソーシャルコマースへの信頼と購買意欲との関係を調査し、そのメカニズムについて説明することを目的とする。その際、ソーシャルコマース情報探索、プラットフォームへの精通度、社会的存在感という3つの概念に着目した。モデルを比較した結果、信頼性、精通度、社会的存在、およびソーシャルコマース情報探索が、ソーシャルコマースプラットフォームに対する行動意図を左右するメカニズムが明らかとなった。Facebookユーザーを対象とした調査の結果、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)への信頼が情報探索を増やし、それがプラットフォームの精通度と社会的存在感を高め、さらに精通度と社会的存在感は購買意欲を向上させることを示唆した(八塚担当)。

→Facebookユーザーを対象に、SNSのプラットフォームへの信頼感と購買行動の関係について検討した論文。SNSと消費に関する研究は結構されているけど、Facebookに限定しているのが特徴。結果は直感的で、SNSへの信頼性や親和性が高いとその中で商品を検索して情報探索したり、購買意欲に影響を与えたりするというもの。特にFacebookにはイイネとかそういうシンプルなインターフェースも影響している可能性についても考察されている。それぞれのSNSの特性に応じた特徴が今後の課題とのこと。

Lin, C. W., Wang, K. Y., Chang, S. H., & Lin, J. A. (2017). Investigating the development of brand loyalty in brand communities from a positive psychology perspective. Journal of Business Research, (August), 0–1. http://doi.org/10.1016/j.jbusres.2017.08.033 

フロー理論によると、フローはブランドコミュニティの特性によって生成され、ブランドに対するブランドコミュニティメンバーの態度に影響を与えるのに重要な役割を果たす。 本研究は、フローを生み出すブランドコミュニティの特性(コミュニティの凝集性や情報の質)を明らかにするためのモデルを提案し、フローがどのようにブランドとの一体感やブランドロイヤリティに影響を与えるかを検討した。自動車ブランドコミュニティ31のメンバー580名が調査に参加し、構造方程式モデルを使用して研究仮説を検証した。その結果コミュニティの凝集性と情報の質がブランドイメージにポジティブな影響を与えることを示した。また、フローは実験参加者のブランドとの一体感にポジティブな影響を及ぼし、ブランドロイヤリティに影響を与えることも示された。ブランドとの一体感の構築におけるフローの仲介的な役割も実証された(松山担当)。

→フローは本文中では「何らかの活動を行うときの最適な心理的状態」と書かれている。本文では、車のブランドコミュニティの成員がフローを感じることで、そのブランドに対するイメージが上がったり、一体感を感じたりするということSEM等による分析で明らかにしている。横断的研究という弱点はあるけど、消費者が持つブランドイメージは文化と人のように相互に影響しあっているというような帰結にたどり着くのかもしれない。マカーのコミュニティとかで同じ研究してみるともっと面白い結果だったかも。

Riva, S., & Chinyio, E. (2018). Stress Factors and Stress Management Interventions: the Heuristic of “Bottom Up” an Update From a Systematic Review. Occupational Health Science, 2(2), 127–155. http://doi.org/10.1007/s41542-018-0015-7  

本研究では、製造業における主なストレスの原因とストレス管理の介入の有効性をレビューすることを目的としている (製造業のストレス研究に関しては、系統的また具体的な検討が少ない)。4大陸 (アジア、ヨーロッパ、アメリア、南アメリカ)の1次、2次、3次介入に関する22の研究を選択し、ストレス要因、方法論的性質、結果の観点からまとめた。その結果研究のほとんどはRCT研究(68%vs32%)であり、2次介入、次に1次介入、3次介入、2次介入との混合の介入が順に多かった。これらの研究には、心理的健康の改善、ストレス反応の低下、認知行動の方法を利用した介入研究が多数含まれていた。主なストレスの原因としては、職業アイデンティティ、組織的な欠陥、対人関係の葛藤、身体的苦痛、劣悪な職場環境に関連していると報告されている。本研究の結果は、ストレス要因の研究と職場のストレス管理の介入の使用を進める上での理論的及び実践的な意味を与えている研究。データを蓄積していくボトムアップ戦略は、従業員の健康を高める可能性のある手段を提供する(堤担当)。

→製造業のストレス研究のレビュー。結構分量が多かったので発表者は大変だった。基本的には既存のストレスモデルと同じ枠組みと大きな差はないけど、分野によってフォーカスされやすい部分に差があるっていう事実が結構興味深かった。多数の文献が紹介されているので、製造業分野におけるストレス反応 (バーンアウトとかアパシーとかも含む) を研究する人にとっては情報価値が高いなあという印象。

Khan, M. L. (2017). Social media engagement: What motivates user participation and consumption on YouTube? Computers in Human Behavior, 66, 236–247. http://doi.org/10.1016/j.chb.2016.09.024

本研究は、能動的な参加 (コンテンツの発信) と受動的な消費 (コンテンツの閲覧) として概念化されてきたYouTubeのユーザーエンゲージメント行為 (YouTubeのコンテンツに対するユーザーのアクション)の行動の動機を明らかにすることを目的とした。1143人のYouTubeユーザーを対象にオンライン調査を行った結果、動画のlike,dislikeには娯楽的動機、コメントや動画のアップロードは社会的相互作用、動画のシェアには、情報共有動機が関連していた。さらに動画の視聴という受動的なコンテンツの消費は娯楽的な動機、コメントを読むことは情報探索動機と関連していた。また、YouTubeの履歴が高いほど「いいね」に消極的となり、匿名性が動画のシェアとアップロードに影響を与えていることも明らかとなった。性差に関連して、男性は女性に比べてYouTubeの動画にdislikeを押す可能性が高かった(中尾担当)。

→YouTubeの機能に着目したWeb調査。こういうのはユーザーインターフェースが変わってしまう速度に研究が追いつかない感じがあるのでなかなか難しい。この研究は探索的な研究で、非常にシンプルな分析だけに情報価値が高く、これからSNS系の研究をする人には結構参考になると思った。You TubeにSNSとしての機能があるのは今まで考えたことがなかったなあ。