研究テーマ 1) バーンアウト概念の再検討
バーンアウトは, “長期にわたり人を援助する過程で, 心的エネルギーが絶えず過度に要求された結果, 極度の身体疲労と感情の枯渇を示す症候群 (Maslach & Jackson, 1984)”と定義され, 主に対人援助職を対象に活発な研究が行われてきました。一方, Kaschka, Korczak, & Broich (2011) は, バーンアウトが, ICD-10やDSM-4の診断基準に含まれていない理由について, うつなどの他の疾患との区別や診断基準が明確でないことなどを上げ, その概念の曖昧さについて指摘しています。
私の行っている研究では, バーンアウト概念のオリジナリティについて “理想に燃え使命感に溢れた人 (Price & Murpy, 1984)”という前提に着目しています。バーンアウトは「がんばりすぎた結果」という前提によってその他の精神医学的概念と比較すると他者からポジティブなイメージを持たれており (井川・中西・浦・坂田, 2013) これが他の概念と異なるバーンアウトの独自性ではないかという観点です 。
研究手法としては、テキストマイニングを用いたイメージ調査、質問紙法を用いた臨床調査、場面想定法を用いた行動実験などを行っています。最終的な目的は「がんばりすぎて燃え尽きる」というバーンアウトと他の精神医学的概念との差異を明らかにすることです。まだまだ先は長いと思いますが、ライフワークとしてやっていく予定です。twitter ID @burnoutbot もよろしくお願いします。
研究テーマ 2) 流行語としての「寄り添い」
「寄り添い」っていう言葉を聞いたことがあるでしょうか?この言葉は辞書的な意味で言えば「ぴったりとそばによる (広辞苑第3版, 1983)」であり, 日本では古くから使われている用語です。元々の用法は, 夫婦関係に代表されるように物理的にも精神的にも結びつきの深い対等な相手を対象とし, それを支えることを意味する表現で使われていました。近年, この「寄り添い」という言葉が医療・福祉・教育などの場面で頻繁に用いられるようになってきています。どうして「寄り添い」が流行しているのでしょうか。もしかすると、医療福祉の専門家にとって「寄り添い」はある意味「都合のよい言葉」なのかもしれません。
現在まで, 新聞記事のテキストマイニング, 場面想定法を用いたイメージ調査などを行ってしています。とりあえずの目的は「寄り添い」という言葉を用いる援助者の心性を明らかにすることですが, 「他者を援助する」という行為のメカニズムまで言及できればなあと思っています。
これからやりたいなあと妄想していること。機会があったら共同研究に誘ってください。
1) 障害者差別について IATを用いて実習前後の顕在差別等を測定することで, 福祉教育の効果を検討してみたい!
2) アスリートバーンアウト 運動課題時の生理指標の変化等を検討してみたい!
3) 社会福祉職のイメージ 一般にもたれている福祉職へのイメージと福祉職が持っている職業イメージを比較することで社会的報酬の有無について検討したい!