第28回-精神専門33-35

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次の事例を読んで, 問題33から問題35までについて答えなさい。
〔事例〕
N市にある相談支援事業所のF精神保健福祉士は, 地域相談支援に関わっている。担当している統合失調症のGさん (55歳, 男性) は, 退院して2か月がたち, 一軒家の自宅での生活に慣れ始めたところである。自宅を残してくれた両親は既に亡くなっており, 一人暮らしである。 ある日, Gさんから「近所との関係で困っている」と電話があった。F精神保健福祉士が早速訪問したところ, Gさんはつい先ほど隣家の住民から「ごみを勝手に持ち帰るな」と怒鳴り込まれたと訴えた。F精神保健福祉士は前回に立ち寄ったときと比較して, 敷地内の乱雑ぶりに筋いた。あらゆる所にごみが積み上げられ, 聞けば「近所に放置されていたから, 家まで持ってきた」という。Gさんは「どれも大切なものであり, ごみではない」と言い張り, 「危険もあるので処分しましょうよ」というF精神保健福祉士の発言に激高した。 (問題33)
その後, F精神保健福祉士は何度も訪問を重ね, Gさんの訴えを傾聴し続けた結果, Gさんはようやく家の片づけを受け入れた。Gさんは自分で片づけると言ったが, F精神保健福祉士は, 量が多いので何回かに分けて一緒に片づけるなど工夫を試みた。 (問題34)
Gさん宅の片づけが無事に終わった後, F精神保健福祉士は定期的に訪問を続けている。隣家との関係は改善されていないものの, 今のところGさんが再びごみを収集することはない。 F精神保健福祉士がN市自立支援協議会でこの件に関連して報告すると, 同様のケースが発生しているということが分かり, 市内の関係機関を対象に, 実態調査を次年度に行うことになった。調査の意義に理解を示したN市が予算を確保し, 調査に携わるメンバーが集められた。現在, それぞれのメンバーがお互いに信頼し合い, 協力しながら作業を進めている。 (問題35)

さてこの事例も3問連続頑張りますよん!昨日の問題と同じようにほぼ用語問題ですねえ。

問題33 次のうち, この時点でF精神保健福祉士が配慮すべきであった倫理事項として, 最も適切なものを1つ選びなさい。
1 クライエントの批判に対する責務
2 個別化
3 自己決定の尊重
4 秘密保持
5 地位利用の禁止

うーむ。「この時点で」というかどの時点でも配慮が必要だから, 倫理なんじゃないのかなあ。。どうもすっきりしない問題です。今日も相変わらず歯切れが悪い解説でごめんなさい。

選択肢1 誤り。クライエントの批判に対する責務は, 倫理基準の中に含まれています。自己の業務におけるクライエントからの批判・評価を受けとめ, 改善に努めるという責務です。一応, 事例の段階では, 批判されていないのでたぶん。。でも「激高」されてるからなあ。。

選択肢2 誤り。個別化バイステックの7原則の一つですね。利用者をかけがえのない個人としてとらえ, 利用者の問題状況に応じて個別的な対応をすることです。これももちろん, 配慮すべきだよねえ。。特に事例の後半に「同様のケースが発生」と書いてあるのもの気になります。

選択肢3 正答。どうやらこれが正解みたいですね。自己決定の原則は, 倫理原則の中に含まれています。クライエントの自己決定を尊重し, その自己実現に向けて援助するのが精神保健福祉士の基本的な姿勢ですね。

選択肢4 誤り。秘密保持の原則は, 倫理基準, バイステックの7原則にも含まれる重要な倫理です。ワーカーはクライエントの秘密を保持して他者や外部に漏らさないというものです。もちろん, この事例でも適用されると思いますが。。

選択肢5 誤り。地位利用の禁止とは「精神保健福祉士は, 職務の遂行にあたり, クライエントの利益を最優先し, 自己の利益のためにその地位を利用してはならない。」というものです。もちろん, 倫理基準の一つなので配慮は必要ですが, この事例からは少し遠い内容ですね。

 

問題34 次のうち, この時点でF精神保健福祉士が試みた工夫として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 地域組織化
2 エコロジカルアプローチ
3 危機介入アプローチ
4 行動変容アプローチ
5 インターグループワーク

今までかなり出題された内容ですがちょっと難しく感じます。なかなか自信がもてませんねえ。この問題をチェック!というか「工夫」って表現, 専門職としてなんだかおかしくないですか?

選択肢1 誤り。地域組織化コミュニティオーガニゼーションとも言われます。これは, 地域社会の福祉向上のために組織的・計画的な活動を行う社会福祉実践を指します。この段階ではまだ地域住民との関係は疎遠なままなのでこれは当てはまらないでしょうね。

選択肢2 誤り。エコロジカルは生態学的と邦訳されます。障害を疾病や個人に属するものと考えるのではなく環境との相互作用で捉えます。事例のアプローチとはちょっと異なっていると思います。

選択肢3 誤り。危機介入アプローチとは, 危機状態にある対象者(個人, 集団, 組織, 地域など)に対して,その状態からできるだけ早く脱出することを目的に迅速かつ直接的に行われる援助です。事例は危機とまでは言えないでしょうね。

選択肢4 正答。行動変容アプローチは, 学習理論に依拠した実践モデルであり, 利用者の問題行動の原因や動機にさかのぼることをせず, 問題行動そのものを取り上げて, 特定の問題行動の変容を目標に働きかける技法です。事例では, ゴミ集めが直接の地域住民との軋轢の原因なのでそこにアプローチするという意味では事例にフィットしたアプローチだと思います。

選択肢5 誤り。インターグループワークは, 複数のグループが存在する地域において, 活動を組織化していく方法で, ニューステッターが提唱したものです。事例にはあてはまらないと思います。

 

問題35 次のうち, この場面で採用された方法として, 適切なものを1つ選びなさ い。
1 ネットワーキング
2 チームワーク
3 ケアカンファレンス
4 コンサルテーション
5 グループスーパービジョン

選択肢1 誤り。ネットワーキングとは, 社会資源をリンケージして「網状のつながり」を作っていく間接援助技法です。事例とはある程度合致していると思いますが, 「お互いに信頼し合い, 協力しながら作業」という意味ではすでにネットワーキングの段階は終わっていると言えるかもしれません。

選択肢2 正答。チームワークとかチームアプローチとかいろいろ言い方があるのでなんだかふわふわしちゃいますが, 様々な専門職や支援機関が目標を共有し活動するという意味ではこれは誤りにはしにくいですね。

選択肢3 誤り。ケアカンファレンスはケースカンファレンスとも言われます。医療や福祉などの現場で, 関係者が情報を共有し, 問題の解決を検討するための会議のことです。これは個別の事例を中心としたものなので, この場面では当てはまりませんね。

選択肢4 誤り。コンサルテーションとは, 機関・組織・個人が 他部門 の専門家との相談・協議・指導を受けることを言います。事例とはちょっと離れているのではないでしょうか。

選択肢5 誤り。グループスーパービジョンは1人のバイザーと複数のバイジーでグループダイナミクスを活用して行うスーパービジョンです。事例とはかなり離れているのではないでしょうか。

さて, これでまた1科目終了ー。なんか今年のこの科目全体的に「?」の問題が多かったなあ。今日はここまでー。

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