第27回–精神専門78-80

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(精神障害者の生活支援システム・事例問題)
次の事例を読んで, 問題78から問題80までについて答えなさい。
〔事 例〕
Dさん (28歳, 男性) は, 元来穏やかな性格の持ち主で, 大学を卒業後, 5年間地元のデパートに勤め, 働くことが生きがいと感じていた。ところが, 交通事故で頭を強打し, 総合病院の脳外科に入院した。数日で意識は回復したが, 以後根気が続かず, また急に怒り出すなど人が変わったようになり, 高次脳機能障害と診断された。退院し復職したが, 約束を忘れたり, 客とけんかになったり, また勤務中に失禁することがあり, 2か月後に退職した。
しばらくしてDさんは, 入院中から相談を継続していたE精神保健福祉士に, 「社会保険がついたところで働きたい」と希望した。E精神保健福祉士は, Uワークを紹介し, Dさんはそこで働き始めた。(問題78)
Dさんは, 働き始めた当初, 他の利用者とトラブルになったこともあったが, 慣れてくると, 徐々に周囲から信頼を得られるようになった。ちなみに, Uワークでは, 一般就労へ多くの人たちが移行していた。そのような中, UワークのF精神保健福祉士は, 取引先のVスーパーマーケット (以下「Vスーパー」という。) へ, 意識的にDさんと共に, 商品を持参する機会を増やした。Vスーパーには, 80名の従業員が雇用されている。F精神保健福祉士はハローワークの担当者と共に, Vスーパーの社長に, 障害者雇用を打診した。社長はF精神保健福祉士に対して, Dさんをはじめ,  7, 8名の障害者を雇用したいと意欲的に語った。そこで, F精神保健福祉士はVスーパーの経済的負担の軽減を図ることができる給付金を紹介した。(問題79)
その後, DさんはVスーパーの面接を受け, 採用が決まったものの, 不安感を抱いていた。それはDさんが, デパートに復職したころの客とのけんか等がトラウマになっていたからである。そこで, F精神保健福祉士は, 就職後のフォローアップをすることにした。(問題80)

問題78 次のうち, Uワークの事業として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 就労継続支援A型
2 就労継続支援B型
3 地域活動支援センター
4 就労移行支援
5 自立訓練

これはそれぞれの社会福祉サービスの内容が分かっていれば解けた問題だと思います。こちらの問題とほぼ同じなので自分コピペです。選択肢1以外は雇用契約に基づいていないので本人のニーズとは合致していませんねー。

選択肢1 正答。就労継続支援A型は, 通常の事業所に雇用されることが困難であって,雇用契約に基づく就労が可能である者に対して行う雇用契約の締結等による就労の機会の提供および生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援事業のことです。雇用契約に基づいているので, 最低賃金等の労働関連法規が適用されます。

選択肢2 誤り。就労継続支援B型は, 通常の事業所に雇用されることが困難であって,雇用契約に基づく就労が困難である者に対して行う就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援事業のことです。こちらはA型と比較すると, 雇用契約がないため, 工賃等に労働関連法規が適用されないため本人のニーズとは合致しません。

選択肢3 誤り。地域活動支援センターもよく出題されます。地域活動支援センターは, 障害者に創作的活動・生産活動の機会を提供することにより, 社会との交流を促進し, 自立した生活を支援する施設である。障害者総合支援法に基づいて市町村が行う地域生活支援事業の一つです。こちらの問題もチェックしておいてください。

選択肢4 誤り。就労移行支援は, 就労を希望する65歳未満の障害のある方に対して, 生産活動や職場体験などの機会の提供を通じた就労に必要な知識や能力の向上のために必要な訓練, 就労に関する相談や支援を行います。

選択肢5 誤り。自立訓練は, 利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう, 身体機能又は生活能力の維持, 向上等のために必要な訓練その他の便宜を適切かつ効果的に行うとされています。 機能訓練 (身体)と生活訓練 (精神・知的)に分類されています。

 

問題79 次のうち, Vスーパーに対して, F精神保健福祉士が紹介した給付金として, 適切なものを1つ選びなさい。
1 障害者雇用納付金
2 障害者雇用調整金
3 報奨金
4 中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金
5 精神障害者等雇用安定奨励金

精神障害者の就労支援に関する問題です。この問題もよく出題されますね。この問題この問題もチェックしておいてください。これまた自分コピぺで解説します。ちょっと難しいなあ。

選択肢1 ・2 誤り。選択肢3 正答。これは障害者雇用促進法の基礎となる問題です。法定雇用率未達成企業 (201人以上)は不足一人あたり5万円の雇用納付金が徴収されます。一方, 雇用率達成の事業主に対しては調査一人あたり2万7000円の調整金が支給されます。 事例の会社は80名の規模ということなので, 中小企業になるので報奨金が支給されるのではないでしょうか。

選択肢4 誤り。これはあまりメジャーではない制度です。中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金は, 労働者数300人以下の事業主が, 障害者の雇入れに係る計画を作成し, 当該計画に基づき障害者を10人以上雇用するとともに, 障害者の雇入れに必要な事業所の施設・設備等の設置・整備をした場合に, 当該施設・設備等の設置等に要する費用に対して助成が行われる制度です。事例では7, 8名となっているので誤りだと思います。

選択肢5 誤り。精神障害者等雇用安定奨励金は, 精神障害者の雇用を促進するとともに職場定着を図るため, 精神障害者を新たに雇い入れるとともに, 精神障害者が働きやすい職場づくりを行った事業主に対して助成されるものです。間違ってはいないと思いますが, 「精神障害者が働きやすい職場づくり」については事例では言及されていないので, 選択肢3の方が正答に近いように思います。

うーんちょっと難しかった。。

 

問題80 次の記述のうち, Dさんに対するF精神保健福祉士のかかわりとして, 適切なものを1つ選びなさい。
1 Dさんが職場において, 課題に直面することを待ってから対応する。
2 スーパーを支援の場として用いずに対応する。
3 期限を定めず家庭訪問を頻回に実施する。
4 同じように就労移行した人たちと, 交流する機会を設定する。
5 Dさんが今後Uワークに立ち寄らないことを確認する。

事例問題らしい事例問題で専門科目の締めですねー。長かった。

選択肢1 誤り。課題に直面して失敗体験を繰り返すのを待つのが正しいとは思えません。

選択肢2 誤り。職場において働いているクライアントを援助する時に職場は支援の場所として重要な場所ですね。

選択肢3 誤り。うーん, 間違っているのかなあ。。ちょっと自信がありませんが, 自立に向かっている本人の援助という意味ではやり過ぎな感じがしますねー。

選択肢4 正答。これは誤りにする理由はなさそうです。

選択肢5 誤り。え??それはないでしょう。。

 

これで生活支援システムもおしまい。この科目も比較的難易度が低かったと思います。最後の事例はサービス問題ですし, 0点を取った人は少ないでしょうね。

精神専門科目全体でみても, やはり例年に比べると難易度は低かったと思います。精神保健はちょっと難しかったけど0点を取るっていう感じもなかったですね。共通免除の方にとっては合格点が上がるのが心配になるかも。

なんとか, 試験発表日までに, 専門科目の解説は終了。とかく疲れました。今年の合格点はどれくらいになるのかなあ。。

「今年はもうやらない!!」って行ってた問題解説ですが, 過去3年間で最もいいペースで進みました。ちょっと一問一問の解説クオリティが下がってきたのかもしれません。共通科目は, 下書きではすでに最後の1科目の前まで進んでいます。乗りかかった舟という言葉もあるし, 明日から共通科目もダッシュで仕上げちゃいます。

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